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2011年11月24日

禁煙マラソン主宰 高橋先生に聞く

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奈良女子大学・保健管理センター教授
高橋裕子先生

こころからの「ありがとう」をライフワークに。禁煙を自分の医療に。

 高橋さんは病院の一般外来として初めて「禁煙外来」を開設した一人。インターネットを利用した禁煙支援システム「禁煙マラソン」主宰で有名な医師であり、現在は奈良女子大学・保健管理センター教授を務められている。子どもの禁煙にも尽力され、このほど奈良県から「第2回あしたのなら」で表彰されたのを機にお話を伺った。

 生まれは奈良県高取町、奈良市で育ち、京都大学医学部・同大学院博士課程終了。大学病院の消化器内科の専門医としてキャリアをスタートし、30代前半で内科医長に就任するなど第一線で活躍されていました。「当時は最先端医療を担っているという自負があり、朝から晩まで“いかにして患者さんを治すか”で頭がいっぱい。毎日忙しくて患者さんとゆっくり話す時間もありませんでした」と振り返ります。
 そんな激務の中、病に倒れました。ここで高くなった鼻がポキンと折れたといいます。「リウマチで膝も手首も動かず、初めて患者という立場になりました。言いたいことも言えず、医師と患者の間には自ずと上下関係ができることを実感しました」。3カ月の休職で奇跡的に回復し、今度は患者さんの話をじっくり聞く医者になりたいと希望、糖尿病の内科医として復職しました。
 禁煙は糖尿病の合併症を防ぐためにも大切ですが、禁煙できない患者さんが大勢いました。ところが、屋根職人の患者さんが自力で禁煙に成功したという。仕事中に何度も喫煙のため屋根を降りなくてはならず、これでは仕事にならないと「タバコを吸いたくなったら冷たい飲み物を飲む」という方法で頑張ったのです。普段は寡黙な人が、禁煙できて家族も自分も喜んでいる、本当に良かったと饒舌に語るのが印象的でした。禁煙に薬はおろか方法も知られていない時代に、意志だけでなく方法があるということ知ったのです。次の患者さんに「冷たい飲み物でごまかす」という先ほど聞いた方法を教えると、この方も禁煙に成功し、同様にとても感謝されました。
 「どちらの方からも心からのありがとうが聞けました。この2つの成功体験が転機になりましたね」。これを機に「禁煙」をライフワークにしよう、自分の医療にしたいと考えるようになったのです。

日本で初めて「禁煙外来」を開設。そして「禁煙マラソン」スタート。

 1994年、高田市立病院へ移り「禁煙外来」開設に向けて奔走しました。「禁煙の手伝いなんて医師の仕事ではない」「男性の高尚な趣味に医師が口を挟むとはなにごとか」と学会で注意されるような時代でしたが、外来はすぐに大盛況に。開設時に作成したパンフレットが地方紙で紹介されると、応募が殺到し全国的な需要の多さを実感、「自信がつきましたが、同時に数が多くて手が回らない、一生かかっても治療が追いつかない」と感じました。
 時はインターネット黎明期、まず患者とメールでのやり取りを試みました。「当時は一通のメールの送受信に1時間ぐらいかかり、返事を打っているあいだに次のメールが届く。容赦のないメールの嵐に参りましたが、実際の禁煙ってこんな風だったんだ」と改めて学ぶことも多かったそうです。
 1997年には通院だけではできない息の長いサポートを、インターネットを使って提供する「禁煙マラソン」を始め、200名の参加がありました。取り組みを通じて「禁煙に一番役立つのは、先に成功した人からのアドバイスや励まし、仲間の存在で、医者が中心にならなくても、患者さん同士のコミュニケーションで禁煙ができる」と実感しました。「医師が介さず禁煙ができるわけがない」と否定する医者もいましたが、これまでの「禁煙マラソン」の成果が間違いでないことを実証しています。
 幸運なことに、初回の参加者が「こんな素晴らしい取り組み、ぜひ続けましょう」と組織づくりに協力してくれました。プロバイダ関係者や技術者、医師や弁護士など優秀な人が力を貸してくれ「禁煙マラソン」のベースができ、改良を繰り返しながら現在まで続いているのです。高橋さんは「禁煙マラソン」の主宰者だが医師として知識と方法を示すだけで実際のサポートはすべて参加者(禁煙した人たち)に委ねているといいます。
 「成功者からのアドバイス、サポートする人、いろんな人に助けられて禁煙マラソンの仕組みができました。今はニコチンパッチやチャンピックスなど禁煙の薬も入手しやすくなって禁煙を始めるのは昔と比べて随分と容易くなりましたが、いかに続けるかが難しいのは今も昔も変わりません。この禁煙マラソンでは禁煙に成功すると自分もアドバイスする立場になり、一生サポートし合いながら成長できる仕組みになっているのです」。

子どもの喫煙の低年齢化に警鐘

 高橋先生は子どもの喫煙の低年齢化にも目を向け、奈良県や教育委員会とともに、小学1年生向けの喫煙の絵本教材を作成しH15年から3年間、全ての児童に配布しました。教育指導要領では5、6年で指導することになっているが、現実では中学生で喫煙している子どもの約半数が4年生までにタバコを始めていることがわかっており、小学校の高学年では遅いと判断、1年生からの教育を提唱しました。そういった取り組みもこの度「あしたのなら表彰」で評価されたのです。

 2009年には日本禁煙科学会の理事長に着任。奈良女子大学教授、京都大学外来担当医、禁煙マラソン主宰、家では3人のお子さんのお母さん…と、多忙を承知でご趣味を尋ねると、思いがけない返答が。「趣味?多くて選べないわ!」今夢中なのは着物とスポーツはスノボー、楽器は三線とのこと。着物は趣味が高じて日本きもの学会の会長代行も務められるほどに。
 常に微笑を絶やさず、周囲への感謝を忘れない謙虚なお人柄ながら、質問にはテキパキと的確に応えられるスマートさ。インタビュー中にお仕事ぶりを垣間みることができたような気がしました。

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