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2012年1月4日

吾輩は猫である 夏目漱石

1月5日は夏目漱石生誕の日

『吾輩は猫である』の舞台は、中学校の英語教師・苦沙弥邸。主人公であり語り手の猫は、苦沙弥先生とその妻・三人の女の子・女中が暮らすこの家に餓死寸前の状態で転がり込み、女中に追い出されても放り出されてもはい上がる。やがてあまりの騒々しさに様子を見にきた先生の目に留まり、何とかすみ着くことを許される。
一家は苦沙弥先生以外、大の猫嫌い。その証拠に生涯名前を付けられることもなく、子どもたちに至っては逆さにしたり、頭に袋をかぶせたり、放り出したり、へっついの中に押し込んだりと好き放題。かといって猫は逃げ出すわけでなく、朝昼晩と家の中で最も寝心地のいい場所を見つけだして惰眠をむさぼるなど、まったく図々しいというか、逞しいというか。
この猫、素性に似つかず観察眼が鋭く、古今東西の文芸に通じている。人間を「わがままなものだと断言せざるを得ない」と一刀両断に斬り捨て、苦沙弥邸を訪れる当時のエリートや成金・拝金主義者を皮肉まじりに批評する。
自由闊達・泰然自若。ときに人間の都合や現実的な力関係に振り回されつつも、独立独歩の猫としての矜持を忘れず生きる姿は痛快そのもの。『こんな風に生きられたら』とあこがれの気持ちすら抱かせる。
猫は最後に酒に酔う。酔っぱらって酩酊したあげく、水の入った大きな甕に落ちてもがく。やがてどうしても助からないとわかった猫は、はい上がる努力を自ら放棄する。苦沙弥先生の家にすみ着くときには何度でもはい上がった猫は、こう悟る。吾輩は死ぬ。死んで太平を得る。ありがたいありがたい。