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2012年1月20日

母国の味・ボルシチのように温かい国際交流を目指して

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シガル オレーナさん 
京都大学大学院 京都府名誉友好大使

ウクライナから来日 日本の伝統文化を学び両国の絆を深め理解を呼びかける

 ロシアと、ポーランドからルーマニアに至る東欧諸国に国境を接し、1991年にソビエト連邦から独立したウクライナ。その首都・キエフ出身のシガル オレーナさんは、キエフ国立言語大学ドイツ語学科(日本語・日本文学専攻)を卒業後、ウクライナの日本人大使館勤務を経て、JETプログラム(※)に参加し、2000年7月に財団法人京都府国際センターの国際交流員として来日しました。
 来日後は、通訳・翻訳・講演・国際交流イベントの企画・運営、さらに留学生への情報提供など、さまざまな業務にあたったオレーナさん。その一方で仕事と並行して、かねてから興味のあった茶道や日本舞踊・着物の着付け・生け花、さらに剣道など、数多くの伝統文化を学び、体験しました。
 オレーナさんが日本に興味を抱くきっかけとなったのが、読書家の父親が持っていた日本の文学書です。大学進学前から『源氏物語』や芥川龍之介・川端康成など、ロシア語訳の古典や名作を愛読し、日本人の美意識に強くひかれたといいます。

 国際交流員としてキャリアを積んだオレーナさんは、06年に京都大学に入学し、08年に京都大学大学院人間・環境学研究科の共生文明学博士課程に進みます。大学院で近代文学の作家・中勘助を研究するオレーナさんにとって学業の合間にホッとひと息つけるのが、料理をつくるひととき。来日してから「ウクライナの料理を教えて」と頼まれることが多く、「日本に来た当時と比べると、見違えるほど上手になった」と笑うオレーナさんの一番の得意料理が、母国を代表する郷土料理・ボルシチです。
 11年12月には、京都府と母国の国際交流の“かけ橋”として活動中の京都府名誉友好大使を中心とした、京都府内の外国人留学生が母国料理の腕を競う「留学生クッキングワールドカップ」に出場し、ブランド京野菜の聖護院大根を使ったボルシチなどをふるまいました。会場では府内の親子など43人が試食を行い、「一番おいしい」と思った料理に投票した結果、見事ウクライナが最多票を得て、「京の親子賞」に選ばれました。
 「その国のことをまったく知らなくても料理を作ることで親近感が生まれ、おいしいものを一緒に食べて笑顔になれることがうれしい」というオレーナさん。料理を「小さな旅」と表現し、「食べてくれる人のことを思って一所懸命につくる料理は、国を超えて言葉以上におもてなしの気持ちが伝わります」と微笑みます。

 世界有数の穀倉地帯であるウクライナは、豊富な農作物や黒海で水揚げされる海産物に恵まれた食材の宝庫です。ボルシチをはじめ、さまざまな郷土料理を育んだ肥沃な大地ですが、1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故により深刻な放射能汚染の危機にさらされます。
 当時、ソ連の支配下にあったウクライナは、原発事故により国土の1/10が放射能によって汚染されたといわれ、チェルノブイリから北へ約100km離れたキエフでも市民の間に危機感が広がりました。
 そうした母国の歴史もあり、2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故には「本当に心が痛む」とオレーナさんは声を落とします。チェルノブイリの事故直後には日本からウクライナに医師や薬など、多くの人的・物質的援助が寄せられましたが、今回の震災と原発事故発生後にはウクライナから日本に、さまざまな情報や援助の手が差し延べられました。
 オレーナさんは「これから自分にできること」として、「ウクライナの人たちに日本の安全について正しい情報を発信し続けていきたい」と話します。「風評被害を食い止めて、また安心して日本に来てもらえるよう、自分なりに復興を支え、イメージを回復していきたい」
 オレーナさんの一番の得意料理・ボルシチは、ジャガイモやキャベツ・玉ネギ・ニンジン・ソラマメ・肉など、いろいろな食材をじっくり煮込んでつくる「家庭の味」。オレーナさんの笑顔と活動から広がる国際交流の輪も、さまざまな国や一人ひとりの思いをやさしく包んで、同じ時代を生きる「地球の家族」とともにこれからも温かく広がり続けていきます。

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