女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

アラン・ドロン特集

2012年2月22日

アラン・ドロン特集2 冒険者たち(1967年 ヒューマン映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ロベール・アンリコ
出演 アラン・ドロン/リノ・バンチュラ/ジョアンナ・シムカス

青春の散華

 いい映画とは、その映画の中でいっしょに生きた気持ちになれる映画のことだ。みたあとで幸福感や満足感に満たされ、心が洗われ、力づけられる映画のことだ。その点からいうと、アラン・ドロンの最高はひょっとして「冒険者たち」ではないか、と迷ってしまう
▼マヌー(A・ドロン)とローラン(R・バンチュラ)とレティシア(J・シムカス)が都会生活に失敗する。マヌーは凱旋門を双発機でくぐりぬけようとしてパイロット免許剥奪、ローランは新型エンジン開発による一攫千金を目指すがレーシングカーは爆発、レティシアは個展に失敗。そこへ舞い込んだのがコンゴ沖に墜落した飛行機に残された巨万の宝さがし
▼お伽話なのにアンリコ監督の沈着な演出は観客に有無をいわせない。脇見もよそ見もさせない。オープニングは初冬のパリ、廃車置場のうず高く積まれたポンコツ車の山の隙間をのぞきながら、レティシアが歩く、それだけで観客はドラマを予感するのだ。せかせかと小型クレーン車をだすローランの武骨さ、マヌーが最初声だけで登場するところも心憎い
▼紺碧のコンゴの海で三人のパラダイスのような船の生活をアンリコは叙述する。男二人は親友同士、どっちもレティシアが好きだが、レティシアはローランが好き。でもマヌーの気持ちを知っているローランはレティシアを受け入れられない。リノ・バンチュラの男っぽさがいい。「さらば友よ」でチャールズ・ブロンソンが演じた役割を、硬派バンチュラが引き受けている。同じスクリーンに好敵手が出現すると俄然冴えるのがアラン・ドロンである。これみよ、とばかり豹のような身ごなしで動き、眉間の縦ジワもくっきりと、いやましに男の憂愁をきわだてる
▼アンリコの映画にはいつも切り札がある。「追想」では復讐の舞台になる古城がそれだった。本作では海に浮かぶ古い要塞である。映像でなければ説得できないものに語らせるこの手口。しかもその映像は美しく格調高くなければ意味がない、アンリコはそう信じている
▼お伽話はいつか幕がひかれる。三人の聖なる三角関係も死の別離が引き裂く。マヌーが撃たれた。「マヌー」このときのバンチュラの声を聞いてほしい。あとにもさきにも、この世にもあの世にもかけがえのないともだち。その思いを、名を呼ぶだけの声で現す。「ちくしょう」怒り狂ったローランの反撃とそのあとにくるラスト。もうやめます。海に浮かぶ古い昔の要塞を映しながら、アンリコはおのが語りを、彼が描いた青春の散華を閉じようとします。

Pocket
LINEで送る