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アラン・ドロン特集

2012年2月28日

アラン・ドロン特集8 燃えつきた納屋(1973年 社会派映画)

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監督 ジャン・シャポー
出演 アラン・ドロン/シモーヌ・シニョレ

追いつめあう 主演二人

 最後まで重量感と圧迫感のある映画でした。同じアラン・ドロンとシモーヌ・シニョレでも「帰らざる夜明け」は、二人が完全燃焼して、きれいさっぱり「あしたのジョー」みたいに白い灰になり「思い残すことはない」という満足感が観客にあったと思うのだけれど、これはねーちょっと違いましたですね
▼シモーヌが主婦をしている農家の近所で、殺人事件があった。捜査のプロセスがだんだん絞りこまれるにつれ、一家の隠し事があぶりだされる。真実がわかったためにだれかが幸福になったかというと全然そうじゃない。余計なことしてくれただけなのよね。こういうこと世間にはよくあるじゃない。当事者にとっては騙し合いだったり裏切りだったり、したかもしれないけど、暴いたからってだれが喜ぶわけでもなかった
▼でもアラン・ドロン判事は頑張るのよ。犯人はぜったいシモーヌの家の息子だと目星をつけて、揺さぶりをかけるの。みごとに頼りない息子たちだから(スネに傷がある)おろおろ、おろおろ、ドロン判事の自信はいまや確信に。愚かな息子でも息子は息子、母親のシモーヌはひとり奮戦し、ドロン判事をよせつけない。シモーヌの底力にドロン判事もたじたじ
▼受けに回ったアラン・ドロンが円熟期の演技の幅を感じさせます。いい芝居をしようという役者魂のようなものが見られる。彼は組むパートナーによってこうも変わるのです。いい監督、いい共演者に恵まれたときの、相手の光を全部吸いとる肉食鳥のような変身が、ただの人気俳優と、50年にわたり主演映画60本を撮った俳優のちがいです。シモーヌ・シニョレといいジャン・ギャバンといい、かれはそういう、寛大に光を吸い取らせてくれる相手をとても大事にしてきました。自分が成長するために力量のある人物をたいせつにする。踏み台にする、という人もいましたけどね
▼本作の結末は「ドロン判事、今までの捜査はなんだったの?」というあっけなさで終わります。ひっかきまわされてシモーヌの家庭はスキャンダルが浮き彫りになっただけ。愚かだけどそれでも自分の子供なのだから仕方ない、という母親の辛さと諦めがいかにも重い。ドロン判事の奮戦にシモーヌは解決をひとつ与えて労をねぎらいます。この映画を「犯人はだれだ」式でとらえると本当の面白さを見逃しそう。主演二人がお互いを追い詰め、すりぬけ、また追い詰め緊迫を締め上げていく。アラン・ドロンもシモーヌも惜しげなく、演劇人としての自分の手の内をみせています。そっちのほうが見応えありますよ。

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