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エンタメ

2012年3月3日

「旅立ちと出発の映画」特集3 8Mile(2002年 社会派映画)

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監督 カーティス・ハンソン
出演 エミネム/キム・ベイシンガ/プリタニー・マーフィー

8マイルを超えた

 1995年デトロイト。自動車産業はすたれ街は沈みきっている。8マイルとは都市と近郊の境界、富裕層と貧困層、白人と黒人の住む地域をわける8マイルロードのことだ。母親(キム・ベイシンガ)と妹とトレーラーで暮らすジミー(エミネム)は得意のラップ(メロディをつけずリズミカルに喋るように歌う)で成功し、8マイルの向こうにいくのが夢だ▼週末にシェルターで開かれるラップバトルに、仲間の後押しをうけて出場するが勝ち残れない。本物のラップは黒人のものというプレッシャーで、白人のジミーは実力をだしきれないのだ。母親は酒に溺れジミーの高校時代の上級生とセックスにふける。幼い妹をジミーは可愛がっているが、あらそいの絶えない家で、怯える妹をみるのもつらい。家を出る金を貯めるため工場でアルバイトを始め、通勤の途中もウォークマンを聴きながら、ラップで使える単語をメモする▼シェルターでラップのバトルを制するグループがフリーワールドだ。彼らはジミーを目の仇にしている。工場でジミーはアレックス(プリタニー・マーフィ)に出会う。いつかニューヨークにいく夢をもつアレックスは、ジミーの才能を信じ二人は恋におちる。しかしアレックスは成功をえさに近寄る男と関係をもつ。裏切りもなんのその、貧困からの脱出をめざすアレックスはエネルギッシュだ。ジミーはフリーワールドの連中に暴行され、目いっぱい落ち込んでいるところへ、ニューヨーク行きがきまったアレックスが、今夜ラップのバトルがあることを告げる▼抑圧の街デトロイト。汚れた壁。低い屋根がつづく街並み。ハンソン監督はあえて黒い風景を表にだす。安い賃金で工員が勤める工ジミーはなじめず身をいれて働かない。ガミガミ叱る上司に、なんでおればかり怒るのだと不満をだく。年配の同僚は「お前が仕事すればだれも怒らない」と言う▼このへんが辛口のハンソン監督の面目だ。辛い現実を生きる力もないやつにどんな夢が実現できる。ジミーは人と社会が認める男にはなにが必要かを学んでいく。勤務ぶりを改め、遅刻もせず、せっせと働くジミーに上司は昇給のチャンスを与える。現実の矛盾をかかえ、生活を噛みしめ、思うようにならないジレンマから搾り出されたジミーのラップは鋭く、破壊力をましていった。ジミーは決勝に進出。もはや逆境を口実に馴れ合っていた青年の、甘いラップではなかった。圧勝のあと「成功がまっているぞ」とはやす友達の言葉に「仕事が残っている」といってジミーは工場にもどる。心のなかで8マイルを超え、新生をえた青年の、後ろ姿が骨太である。

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