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シネマ365日

2012年3月10日

モンパルナスの灯 (1958年 ヒューマン映画)

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監督 ジャック・ベッケル
出演 ジェラール・フィリップ/アヌーク・エーメ/リノ・バンチュラ

モジリアニと銀幕の貴公子

 フランス映画史のうえでヌーヴェル・ヴァーグがあまりセンセーショナルに扱われるものだから、それ以前の映画がかすんでしまった。しかしいい映画はいいのだ、という素朴な映画ファンの目から見なおせば、斬新だとか、革命的・新進気鋭の作家集団と持ち上げられたヌーヴェル・ヴァーグは、じつはエネルギーのあるおふざけであったとか、元気のいい屁理屈だったとか、わずらわしい観念論だったとか、当時の熱狂とはまた異なる視座が生じるのは当然といえよう▼ヌーヴェル・ヴァーグが伝統の映画をなぎ倒す直前、フランス映画界を背負ってたつ、このスターがいた。ジェラール・フィリップである。1959年彼は36歳でこの世を去った。早すぎる死であったが、1960年代に入り、フランス映画の様相を一変させるヌーヴェル・ヴァーグの波を考えると、彼の死は映画の一時代の終わりであり、一時代の始まりだったという気がする▼本作の主人公は画家モジリアニ。フィリップと同じ36歳で貧困のうちに死んだ。モジは美男だった。銀幕の貴公子と呼ばれたフィリップにふさわしい映画となった。監督はフィルム・ノワールの名作「現金に手をだすな」のジャック・ベッケル。ちょっと意外な取り合わせかもしれないが、芸術の世界も暗黒街も、体を張って修羅場に生きる、という点では案外似ているかもしれない▼本作はモジの伝記であるからご存知の方が多いだろう。モジと画学生ジャンヌ(A・エーメ)は恋に落ちるが、ジャンヌは親の猛反対にあい、失望したモジは酒に溺れる。一時の別離はあったが親元を離れてモジのもとにきたジャンヌは、モデルをしながらモジを支える。精神的安定を見出したモジは、一向に絵は売れなかったものの、画業は格段に輝きをましていく。そんなモジの絵に目をつけていた画商がいた。モレルである(R・バンチュラ)▼結核が進み重症のモジは夜の街路で行き倒れ、警察は行路病者として病院に収容し、息を引き取る。そばにいて死を確認したモレルはその足でジャンヌがいるアパートにいき、嵐のように絵を買いまくる。それをみながら「夫がいたらどんなに喜ぶでしょう。あの人は長い間認められなかったのですから」とジャンヌは涙ぐむ▼デビューしたばかりのリノ・バンチュラが、憎々しいまでに冷酷な画商を演じてずば抜けていた。というわけで、本作はジェラール・フィリップの代表作というばかりでなく、映画史の分水嶺にある記念碑的作品です。

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