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シネマ365日

2012年3月17日

真夜中の刑事 (1976年 サスペンス映画)

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監督 アラン・コルノー
出演 イヴ・モンタン/シモーヌ・シニョレ/ステファノ・サンドレッリ/フランソワ・ペリエ

悲しみのパイソンが火を噴く 

 神は細部に宿る。ディテールが行き届いた映画はそれだけで観客を引き込む。「真夜中の刑事」でいえば主人公フェローの分身ともいえる拳銃、コルト・パイソン357だろう(これが原題だ)。世界ピストル図鑑(高橋昇著、光人社)によれば、パイソン(にしき蛇)と呼ばれる威力と、高度な設計思想をもつ拳銃で、本格的な357マグナム弾を使用するリボルバーとして開発された▼孤独な刑事フェロー(E・モンタン)の部屋から映画は始まる。コルト1911、チェコ型タイプ、S&Wのミリタリーリボルバー、ライフル、ショットガンが整然と銃架に並ぶ。フェローはパイソンの弾丸を自分で鋳造している。ベッドと電話しかない簡素な室内。目玉焼きをつくるのと同じ淡々とした銃のメンテナンスの手際が、ハリウッド式ガンファイター映画とはちょっと違うな、とすでに思わせる▼フェローは恋人シルヴィア(S・サンドレッリ)を殺害され真犯人を追う。彼女の愛人でありフェローの上司であるガネイ署長(F・ペリエ)が、シルヴィアの心変わりを知り嫉妬に狂って殺したのだ。ガネイは妻テレーズ(S・シニョレ)に打ち明け自首するというが、目撃者がいないのならあわてなくてもよいと妻は止める。テレーズは自分が病身ゆえセックスパートナーとしてシルヴィアを容認していた。まるでガネイの母親みたいな存在だ▼捜査が進むにつれ、フェローに不利な目撃証言が出てくる。フェローは自分の顔を硫酸で焼いて、目撃者の証言をはぐらかす。ガネイはフェローを殺害し罪をなすりつけようとするが、逆にフェローに射殺される。テレーズは夫の犯罪が明らかになる前にフェローにすべてを打ち明け自殺。そのいきさつをフェローの部下が聞いていた。真相を上司に報告しようとした矢先、スーパーに武装強盗一味が押し入った。フェローが走る。身に帯びる武器はパイソン一丁▼筋の運びもたるみない。モンタンは「仁義」でも特別な弾丸を自分で作る射撃の名手を演じた。この映画のフェローは孤児の身の上で、パイソンだけを友に生きてきた。やっと心を許した恋人を殺され、気が狂ったように犯人を捜査する、物悲しさのたちこめた晩年のモンタンが驚くほど渋い。射撃戦のなか悲しみのパイソンが火を噴く。スポットライトを浴びる歌手モンタンはどこへ消えた。本作でモンタンは陽気な「地中海の快男児」も「世界の恋人」も、その片鱗もみせませんでした。幻のフィルム・ノワール(犯罪映画)のDVD化。アラン・コルノー監督の傑作です。

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