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シネマ365日

2012年3月21日

あの日、欲望の大地で (2009年 群像劇映画)

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監督 ギジェルモ・アリナガ
出演 シャーリーズ・セロン/キム・ベイジンガー

焼失 そして再生の予感 

 荒野にポツンとあるトレーラーハウスが炎上している。どうにもこうにも救いようがないという感じの、激しく索漠としたファーストシーンがいいですね(原題は「燃える大地」)。異なる時間を輪切りにして三つの物語が進む群像劇です。登場人物相互の関係が中盤あたりで明確になり、スリリングに集結していきます▼シルヴィア(シャーリーズ・セロン)はレストランの有能なマネージャー。颯爽と仕事を処理する彼女にいいよるセレブも少なくない。彼女はそんな客と行きずりの情事にふける。ある日カルロスと名乗るメキシコ人が、マリアをいう少女を連れてきた。シルヴィアは生まれて2日のマリアをおいて家を出た。12年前のことだ▼ジーナ(キム・ベイジンガ)はシルヴィアの母。シルヴィアは母に代わり3人の幼い弟妹の面倒をみる健気な少女だ。母の不審な電話から情事を知り、逢引の場所であるトレーラーハウスをつきとめる。ジーナが乳がんの手術のあと夫は妻を抱けなくなっていた。ジーナは切ない。傷跡を気にせず愛してくれるニックにジーナは溺れていく▼母親の裏切りを娘は許せない。トレーラーのガスボンベに導火線をしかけ火をつける。みるみる炎上するが2人は飛び出してこない。火事にも気づかせないセックスとは、言い寄る男といくら寝てもシルヴィアにはわからない。荒波の打ち寄せる浜辺で自分の太腿に傷を入れる自傷行為を繰り返す。シルヴィアの娘の父親とは、ジーナの不倫相手だった。彼は飛行機の墜落事故で入院、生死の境にいる。カルロスにマリアを母に会わせてくれるように頼んだのだ▼それぞれが負った傷のため、別々の人生を歩んでいた登場人物らの、閉ざされた心が一点に合わさる。母を殺した罪から逃れられず自分を傷つける娘…自らの苦闘の生い立ち、実母との絆という半生もあって、複雑な精神的背景を背負うヒロイン像「モンスター」とか「スタンドアップ」をシャーリーズ・セロンは好みますね。おめでたいラブロマンスの役作りにはのめりこめないようです。「あの日、欲望の大地で」は制作にも参加し、劇中あっさりヌードにもなる惚れ込みようでした。キム・ベイジンガはセロンの指名にこたえ、家族を愛しながらもやるせない性にひきずられる、善良な主婦を好演しました▼最初に戻りますが、荒野に燃えるトレーラーハウスで監督はなにを表したかったのでしょう。焼失という言葉がありますが、たぶんそれだった。燃えてなにもかもなくなる。無に帰したあとにはでもなにか生まれるのではないか。救いのなかったファーストシーンから、すべて手の内を明かした監督は、ラストに再生の予感を与えています。

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