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シネマ365日

2012年3月22日

フランケンシュタイン (1994年 ヒューマン映画)

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監督 ケネス・ブラナー
出演 ケネス・ブラナー/ロバート・デ・ニーロ

何年たっても見てソンのない映画

 知り尽くされた作品の映画化に挑むのは、それなりの自信があってだろう。ケネス・ブラナーは日本では騒がれないがイギリス演劇界の鬼才。映画にも進出しシェークスピアものをつくったが、彼にとってシェークスピアは自分の家の庭。いっちゃ何だけど、この「フランケンシュタイン」のほうがずっと面白かったし傑作だ。彼の映画作りの目配り、というようなものがすごいと思うのだ▼どこがか。まず美術監督はブラナー作品をすべて手がけたティム・ハーヴェイ。フランケンシュタインは裕福な家の跡取り息子ですからね、お金に心配なく学業に打ち込んだ天才的科学者が、母親を失った悲しみで永遠の生命を創ろうとしている。だからあとさきなく金をつぎこんだ巨大な実験室をハーヴェイは再現した。いわゆるスチームパンクです。スチーム(蒸気)科学が超越的に発展したらこうなる、という仮設のもとに装置を組み立てた。壮大な実験室で、雷の電気ショックに打たれたクリーチャー(R・デ・ニーロ)が胎動する前半のクライマックスは唸る。ブラナーとハーヴェイの想像力の勝利です。ブラナーは当時34歳。実験室で裸になったときの、一片の贅肉もなく引き締まった上半身もお見逃しなく。肉体は役者の器です。アクション俳優ではなくても、これくらい細心のメンテナンスをしているのですね▼それにクリーチャー(怪物)が人間的だ。もちろんデ・ニーロの力量もあるが、脚本を共同執筆したステフ・レイデイの、女性の叙情的な感性が生きている。中途半端な創造で醜いまま放り出されたクリーチャーが、父フランケンシュタインに棄てられたと知って号泣し、復讐を決意する。ただ凶暴な怪物ではなく次第に言葉を覚え、目の前に現れたときのクリーチャーの知性に、フランケンシュタインのほうがたじたじとなる(もともと後ろめたいのだからね)▼フランケンシュタインとは神を冒涜する呪われたマザコン男であり、クリーチャーに罪はないのだと、当事者責任をはっきりさせたことがゲテモノ映画とちがう。だから自分を追ってはるばる北極海まで来て、のたれ死にした父を抱き、氷原に消える孤独なクリーチャーに観客は哀れを禁じ得ない。こんな禁断の物語は詮索無用。胸に秘めて「故郷(くに)に帰ろう」という船長の台詞がいい。こういうところに映画作りの目配りが行き届いています。公開から何年たとうと見てソンのない映画です。

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