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シネマ365日

2012年3月24日

SOS北極…赤いテント (1969年 実話がモチーフの映画)

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監督 ミハイル・カラトーゾフ
出演 ショーン・コネリー/ピーター・フィンチ/クラウディア・カルディナーレ

そして夢をみるのだ 

 部下を見捨て生き残った卑劣漢として世界中から非難をあびた、探検家ノビレ(P・フィンチ)。遭難事件から40年、ノビレの部屋に物故した当事者たちが集まりノビレの弾劾裁判を開く。罪名は指導者としての能力欠除・責任放棄・臆病な行為等だ▼ノビレのライバル、アムンゼンは遭難の報を受け救出に向かうが自分も命を落とす。ノビレは卑怯者として生き、アムンゼンは英雄として死んだ。この歴史の点描に「赤いテント」は疑義を唱える。架空裁判に証人として出廷したアムンゼンは、陪審員全員の判決を却下し、一人ひとりの証言を検証していく▼ノベレと意見が対立し別行動をとった、船長ザッピには「君は積極的な将校だ。探検隊の隊員にふさわしい人物だ。だが私ならたとえ公園の探検でも君は同行させない」ワレリアに乞われ、救出に飛んだ飛行士ルーンボルグには「なぜ君は執拗にノベレを一番先に飛行機に乗せたがったのか。ノベレはまず怪我人を優先させようとしたのに」「金さ。大勢の人間が金のためには何でもする。人生の幸福は金だ」「金だけか。それにしては幸福そうに見えないな。不幸な人間は何事にも無関心だ」▼船長とともに別行動をとり死に至ったマルムグレン(ワレリヤの恋人)には「君は純粋だ。若いときのおれのようだ。しかし純粋さからはなにも生まれない。恋愛もヘタだ。君が少し違っていたら彼女も幸せになれただろう。彼女に人間らしい幸せを味合わせればよかったのだ」アムンゼンから「裁く資格なし」の指摘をうけた彼らはつぎつぎ退場し、アムンゼンとノベレが相対する▼「君の判断は正しかったと思う」アムンゼンはノベレを責めない。しかし「ひとつ疑問がある。たとえ飛行士が執拗にすすめたにせよ、なぜ飛行機にのった。あの行動の原因は何だった」「ここで先に乗ればキャリアが終わることも考えた。残るか先に行くか半々で悩んだ」「行く理由のほうが一つ多かったはずだ。だから君は先に乗ったのだ。それは何だ」「そうだった。基地にもどれば入れる風呂のことを考えていた」「それが君の過ちだ。4週間も氷河にいれば目の前に温かい風呂のあることを人間なら考える。しかし将軍になればそんな感情はすてるべきだった。もっともそんな指導者はおらんがね。私も偉大なアムンゼンになりたかった。友救出のためなら危険も顧みないという邪念はあったのさ。君と同じ一つ余計な理由がね」▼しかし「私と君のちがいは、私はすぐ死んだことだ。ノベレ、君は生き過ぎたな」「もし君が生き残っていたら?」「自分を許したよ。そしてパジャマに着替えて寝た。それこそが必要なことだ。寝ろ。そして夢をみるのだ」「何の夢を?」「私達がした、そして見た今世紀最大のできごとを」アムンゼンの与えた許しと理解に、ノベレの脳裏に巨大な北極の氷塊が現れ、北海の蒼い波に洗われ崩れ落ちる。それは事件後40年間、ノベレの内面に凍結していた死に損ないの汚名、卑怯者の汚辱という氷塊の崩れ去る音だった。しびれる映画だ。

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