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シネマ365日

2012年4月3日

再びヒッチコック特集3 汚名(1946年 サスペンス映画)

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監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 イングリッド・バーグマン/ケーリー・グラント/クロード・レインズ/レオポルド・コンスタンス

バーグマンとの長い友情 

 ヒッチコックとバーグマンの友情は、たとえば「マイ・ストーリー」(バーグマン自伝)などで楽しそうに書かれている。ヒッチコックは「夕方6時を過ぎないと決してマティニーを飲まなかった。人のグラスをいっぱいにしておくのが好きだった。彼はわたしに底なしという名誉称号をたてまつった」飲み過ぎたバーグマンが「ヒッチ、わたし眠くなったわ」「眠りなさい。その間に食事を作っておくから」バーグマンが目をさますと真夜中だった。ヒッチコックが向かいのソファで眠っており片目をあけたのでこう聞いた「ヒッチ、食事は」「忘れていたよ。眠ってしまったのだ」折角の食事は冷たくなっていた▼「汚名」でもバーグマンがうまそうに冷えた白ワインやマティニーを飲む。そして「汚名」のラスト近くベッドに横たわるバーグマンを、伝記作家ドナルド・スポトーは「ヒッチコック映画と生涯」でこう書く。「このベッド・ルームのバーグマンほど、繊細で、いとおしむような撮られ方をしている女優は映画史上かつて」なく「監督がただ女優をほめたたえているのか、感情に深くかかわっているのかを見分けるのはたやすく」前者の例として「リリアン・ギッシュに対するグリフィス、後者を代表するのにマレーネ・ディートリッヒに対するジョセフ・フォン・スタンバーグや、イングリッド・バーグマンに対するヒッチコック」とあげた▼粗筋は、父親がナチスのスパイとして有罪判決を受け、スパイの娘として悪名を高められたアリシア(E・バーグマン)は町中から白い目でみられやけくその日々。憂さ晴らしのパーティーでFBIのデブリン(ケーリー・グラント)にあい、南米に逃げたナチス一党と彼らの計画をさぐりだす任務を打診される。すてばちなアバズレ女ふうにグラントにからむバーグマンがみものだ。彼女にはテクニックを超越する輝かしい素質があると、イングリッドと舞台で共演したマクスウェル・アンダーソンは言った。ハリウッド入りした当初は「スウェーデンからきた健康な雌牛」などと評された、よく笑う大柄で無邪気な女優は、いまや押しも押されぬアメリカ映画界の頂点にかけあがっていた。吸い込まれるような笑顔。スクリーンを圧倒する堂々たるグラマーぶり。同じスウェーデンからきたグレタ・ガルボが高いバリアーを張って容易に人をよせつけず、神秘のなかに溶けこもうとするのに対し、イングリッドは明るく陽気だった▼当時キスシーンは3秒までという検閲があり、ヒッチコックは3秒ぎりぎりで唇をくっつけたり離したりさせ、延々とつづくキスシーンに文句を言わせなかった。ワインセラーに秘密があるとデブリンはにらみ、中に入れる鍵を手に入れるようアリシアに頼む。盛大なパーティーのさなか、広い会場を俯瞰する位置からぐんぐんキャメラが迫り、アリシアの手にしっかり握られた鍵へとズームダウンするショットは、数あるヒッチコック映画のなかでも撮影術の白眉といわれる▼アリシアを愛し、結婚し、裏切られ、殺されるセバスチャンを特筆したい。姑(レオポルディーネ・コンスタンス)はアリシアを臭いと見ぬくのだが、ベタ惚れの息子は母親をうるさがるだけだ。アリシアの正体がわかったとたんセバスチャンは「母さん、母さん。助けてくれ」と泣きつく。母親は(それみたことか)ことを荒立てずヒ素で毒殺しようと提案する。マザコンの息子とモンスター姑を「彼らが映画をおもしろくした」とヒッチコックはほめた。クロード・レインズは「汚名」でみごとオスカー助演男優賞を受賞している。

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