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シネマ365日

2012年4月6日

再びヒッチコック特集6 舞台恐怖症(1950年 サスペンス映画)

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監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェーン・ワイマン/マレーネ・ディートリッヒ/マイケル・ワイルディング/リチャード・トッド

ヒッチコックとディートリッヒ 

 ディートリッヒとヒッチコックの映画は「舞台恐怖症」一本だけだ。ディートリッヒ49歳のときだ。ヒッチコックには「コテンパにやられた」と回想している(「ディートリッヒのABC」)。「彼は自分がなにを求めているか正確に知っている。そのことに私は尊敬するのです。私は自分がちゃんとやれたと確信がもてたことは一度もない」とヒッチコックの監督術をほめ、「仕事のあと彼はわたしたちをレストランに連れていき、ニューヨークから航空便で取り寄せたステーキをごちそうしてくれた。彼が私達に本当はうんざりしていないことをそうして示そうとしているのだと思った」▼ヒッチコックのことで最も印象に残っているのは「静かな威厳。独裁者と思われずに独裁者でいられる能力」ディートリッヒは感激してごちそうを平らげたが「ヒッチコックが仕事以外に時間をとるのは豪華な夕食だけで、多くの天才と同様、彼は人に取り囲まれ騒がれるのを好まなかった。私は彼の英国的なユーモアがたまらなく好きだった。彼は自分の名声にものを言わせたり、喝采を狙ったりせずにいつも冗談を言い合った。ドイツのことわざの、何度真似されても決して到達されないとは、ヒッチコックのことだった」彼女の自伝には著名人への強烈な非難もあるのに、ベタボメだ▼しかし事実はちょっとちがうニュアンスがある。キャメラのダ・ヴィンチといわれたジョセフ・フォン・スタンバーグ監督のもとで主演を7本、光と影のキャメラアングルに専門的な知識を身につけたディーリッヒは毎朝早めに現れ、あれこれと撮影のアングルに注文をつけた。スタッフが仰天してヒッチコックに報告すると、彼女の言うとおりにしてくれと言った。ディートリッヒに対する遠巻きにした尊敬のようなものがヒッチコックにはあり「撮影現場で映画に口をだし、かなりの自由を許されたただ一人の女優」だったとドナルド・スポトーはヒッチコックの評伝に書いた▼ヒロイン役のジェーン・ワイマンはのちの大統領ロナルド・レーガンと離婚したばかりだった。2年前「ジョニー・ベレンダ」でオスカー主演女優賞も取っている演技派だ。しかし謎を秘めた年配の舞台女優、というディートリッヒにはじめからコンプレックスがあった。たしかに「舞台恐怖症」のディートリッヒは、どこまでも「運命の女」が似合う格違いの存在感をみせている▼演劇学生イブ(J・ワイマン)は車を運転しながら、友人のジョナサン(M・トッド)が、愛人のシャーロット(M・ディートリッヒ)の殺人の後始末をしようとして女中に目撃され、逃げてきたところだと打ち明ける。犯人扱いされた彼をイブは父のところに匿う。ジョナサンの無実を晴らすためイブはシャーロットの家の女中になりすまし探索するのだが、若い刑事スミスが彼女に関心をもつ▼ヒッチコックらしい二転三転はあるが「だれも命の危険にさらされていない」とフランソワ・トリュフォーは不満を言い、ヒッチコックもちょっと構成が弱かったと認めた。当時はいざしらず62年たってからみると、スクリーンで生彩を放っているのは、やはり圧倒的にディートリッヒだ。エドガール・モランは著書「スター」のなかで「ディートリッヒはサラ・ベルナールのような女優ではない、フリュネ(ギリシャの娼婦)のように神話だ」といったアンドレ・マルローの言葉を引用している。

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