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シネマ365日

2012年4月8日

再びヒッチコック特集8 ダイヤルMを廻せ(1954年 舞台劇映画)

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監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 グレース・ケリー/レイ・ミランド/ジョン・ウィリアムズ 

黄金時代始まる 

 室内という狭い場所でドラマを作ることにヒッチコックは自信があった。「ダイヤルMを廻せ」はもともと舞台劇で、ほとんど居間だけで物語は推移するが「居間どころか小さな電話ボックスの中だけでも映画は撮れる」とヒッチコックは豪語している。それを裏付けるように「ロープ」「裏窓」「レベッカ」「サイコ」それに「鳥」も極めて限定されたエリアの映画の範疇にはいるだろう▼主演のグレース・ケリーを「監督したなかで最も協力的だった女優」と手放しでほめた。ヒッチコックは都会的でソフィスケートされた女性を、なぜ好んで起用するかについてこう答えた「私の求めている女性のイメージは、上流階級の洗練された真の淑女でありながら寝室に入れば娼婦に変わり、タクシーに乗れば自分から男のズボンを脱がせるような大胆さを秘めている女」とまあ、好きなことを言っている▼「ダイヤルMを廻せ」は「裏窓」とほぼ同時に製作が進んだ。グレース・ケリーという、彼の女神のごとくお気に入りの女優を得てヒッチコックの仕事はすこぶる順調だった。彼女はヒッチコックの3本の映画に主演し、モナコ国王レーニエ3世と結婚して映画界を去った。撮影中のヒッチコックが並外れた忍耐の持ち主であり、決して怒らなかったと彼女は言っている。もっともグレース・ケリーは大切に扱われた。彼女の意見は取り入れられ、ラッシュをみて君のいうことが正しかったとヒッチコックは気持ちよくほめた。監督の精神が安定し快適であることは傍目にも明らかで、撮影は好調に進んだ▼ヒッチコックの映画にはひとつかふたつ、撮影技術のテキストになるようなシーンがあるが「ダイヤルMを廻せ」ではハサミだった。絞殺されかかっているヒロインが夢中で手をのばし、ハサミで刺すシーンに1週間かけた。ハサミの光る感触がどうしても欲しかったそうだ。殺人現場で首を絞められてもだえているグレースのむきだしの脚を舐めるようにキャメラが這っていく、ヒッチコックの大好きなセックスの代替シーンもせっせと取り入れ、心技体充実の(ダイエットにも成功した)ヒッチコックは黄金時代に入る。映画はもちろんヒットした。原作はフレデリック・ノート。後年オードリー・ヘップバーンのヒッチコックタッチの、これまた室内劇「暗くなるまで待って」の原作者でもある▼資産家の妻マーゴ(グレース・ケリー)の夫トニー(レイ・ミランド)は元花形テニス選手。華麗なる国際プレーヤーにあこがれ結婚したが、夫の引退とともに夫婦仲は冷え切った。トニーはアメリカの作家と不倫している妻の殺害計画を立てる。ところが送り込んだ刺客は逆にマーゴに殺されてしまった。正当防衛であるが、トニーはマーゴを殺人犯に仕立てようと画策する。マーゴは死刑判決を受ける。ヒッチコックはこのシーンをグレース・ケリーのクローズアップと独白だけでテキパキ片付けた。法廷シーンなんか持ちだすと「話がもうひとつ始まる印象を」観客に持たせるという判断だった▼水面下で調査を続けていたハバート警部(ジョン・ウィリアムズ)は処刑の前日、動かぬ証拠でトニーの犯罪を見破る。「鍵」「ハサミ」の小道具がまるで生き物のように生彩を放つマジックのような技術も、なくてはならぬヒッチコックの映画術としてしだいに有名になった。警部を演じたジョン・ウィリアムズは「パラダイン夫人の恋」「泥棒成金」にも出演するヒッチコック組の一人だ。警察官がはまり役で、テレビの「刑事コロンボ」「鬼警部アイアンサイド」にも出ている。

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