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シネマ365日

2012年4月17日

引き裂かれた女 (2007年 事実に基づいた映画)

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監督 クロード・シャブロル
出演 リュディヴィーヌ・サニエ/フランソワ・ベルレアン/ブノワ・マジメル

フランスの川端康成 

 77歳という年齢がそうさせたのか、シャブロル本来の持ち味がより先鋭的になったのか、見方はわかれるだろうが、田舎のガラ空キの道を平坦にドライブするように映画は語られる。高速道路をぶっとばす走りではない。しかし「沈黙の女・ローフィールド館の惨劇」にせよ、前代未聞の狂気を、わざとたいらに地ならししてしまったシャブロルだ。みせかけの平坦の底に、シャブロル流不条理が身を潜めているのは明らかだろう▼ヒロインはテレビ局でお天気キャスターをしているガブリエル(リュディヴィーヌ・サニエ)。母親が営む本屋へ高名な作家シャルルがサイン会にきた。ガブは30歳も年のちがうシャルルに惹かれる。彼はいまさら若い女一人とできてどうこういう年ではない、セックスを持てあますと秘密の社交場の乱交パーティーにガブを連れていく(具体的には映画には映らない)。若い娘のおもりが大変になると秘書に部屋の鍵をかえさせ、行方をくらましあっさりガブをすててしまう▼ガブはショックのあまり、言い寄っていた若い富豪の御曹司ポールと結婚する。これがどうしようもない「おバカ」で、することなすこと、母親がもみ消してばかりいる。感情が幼稚だからまともに仕事もせずいばりちらし、嫉妬に狂い、式典に出席したシャルルをみかけるや射殺する(同様の事件があったことを「引き裂かれた女」は下敷きにしている)。もちろん母親は後始末に奔走する▼ドラ息子の減刑にはガブの証言あるのみ。ガブはシャルルの乱交セックスのスキャンダルを証言し(ここも映画にはでない)ポールに同情が集まり、減刑となる。減刑に成功するや、母親は用のなくなったガブにビタ一文与えず追い出す。とまあ幸福になる人間が一人もおらず、というより人生なにが幸せなのか、なにが真実なのか、簡単にいえて「たまるかいな」という、シャブロルの冷笑がスクリーンのむこうにみえてくる。かわいそうなガブはどうなった。奇術師の叔父のアシスタントとなり、のこぎりで胴切りされる手品に出演中。おなかをマップタツにされるとき(これか、引き裂かれた女というのは。まさかね…)ガブの頬に涙が流れる。ここで映像は田舎の車道の平坦ドライブから一転、妖しい色彩が激しく点滅するサイケな、デビッド・リンチ的エンディングを迎えるのだ。省略が多いので観客は想像力で補完しながらでないと全体がつながらない。シャブロルはグタグタ説明するのが彼の美的センスに反していやだったのだと思うけど、たとえば島村と駒子に何があったのか「後始末」だけで想像せよという、なんか「フランスの川端康成」ふうだね。

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