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シネマ365日

2012年4月20日

イングロリアス・バスターズ (2009年 戦争映画)

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監督 クウェンティン・タランティーノ
出演 ブラッド・ピット/クリストファ・ヴァルツ/メラニー・ロラン

炎上のカタストロフ 

 タランティーノの映画に一貫するのは「無意味へのこだわり」だ。逆をいえば意味あるものにデタラメと残虐をまぶし、大口あけて真っ赤に哄笑する。「イングロリアス・バスターズ」もまさしくその路線で、ヒットラーもゲッペルスも映画館で死んじゃうのである。史実なんか足蹴にして何でもあり。ナチスのユダヤ人への極悪非道を制裁するはずの「イングロリアス・バスターズ」の隊長、レイン中尉が「頭の皮をはげ」だの「バットで大脳をつぶせ」だの「手足をちぎれ」だの、ナチスも顔負けの残虐行為を指示する。人間のやることなんかたいして変わらん、どっちもどっちなのだよ、と覚めているのがタランティーノだ▼ストーリーは章立てになっているからわかりやすい。語りはサミュエル・ジャクソン。オープニングにいきなり「アラモ」の主題曲、そして「エリーゼのために」「荒野の1ドル銀貨」等々いたるところにオマージュがちりばめられているのは相変わらずの演出だ▼ユダヤ・ハンターの異名をとるランダ大佐(クリストファ・ヴァルツ)に家族全員虐殺されたショシャナ(メラニー・ロラン)は、逃げ延びてパリで映画館主となっている。その映画館にヒトラーはじめナチス幹部が、プロバガンダ映画上映のため一堂に会する。ショシャナは全員を焼き殺す計画をたてる。同じ情報をききつけたイギリス軍はアメリカの秘密部隊「イングロリアス・バスターズ」と合流し、映画館爆破テロを目論む。映画の後半はタランティーノのちくちくというか、ねちねちというか、母猫が子猫を舐め回すような泥濘的愛情というか、そんなエピソードがぎっしりと押し込まれつつ「イングロリアス・バスターズ」はラスト壮大な炎上へ、カタストロフへと向かう▼あとひとつ。ランダ大佐である。煮ても焼いても食えないやつ。ナチの狂気の思想に凝り固まった男。そのくせナチの残党狩りまで予測し「イングロリアス・バスターズ」らにヒトラーを殺させ、戦争終結に最大貢献した人物としてアメリカに亡命、財産の保障を取り付けようとする。執拗で偏執狂で狡猾、吐き気をもよおす気色の悪い男を演じて、クリストファ・ヴァルツはオスカー助演男優賞。出番の少ない、またあんまり冴えなかったブラピに代わり、映画を盛り上げた立役者は、登場するたびに不吉な予感をまきちらすこの死の保菌者だ。

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