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シネマ365日

2012年4月22日

普通の人々 (1980年 家族映画)

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監督 ロバート・レッドフォード
出演 ドナルド・サザーランド/メアリ・タイア・ムーア/ティモシー・ハットン

愛していなくてもいいじゃない

 昔の映画を見直すのもいいものだ。レッドフォードの処女作でオスカー監督賞受賞が話題になった。レッドフォードの少年のような繊細な感性が、といえばできすぎのようだが、ちょっと繊細さにのめりこみすぎじゃないかと思ったのが「普通の人々」だ。現実に生きる家族は、確かにこういう破綻や崩壊に出会うのだけれど、だまし、だまし、乗り越えていく。いい意味のふてぶてしさというか、いい加減さというか、そういう人間のほろ苦い部分を開き直って受け止めるには、44歳のレッドフォードはたぶん若すぎたのだろう▼幸せな弁護士一家がある。父はドナルド・サザーランド。母を演じるのはメアリ・タイア・ムーア。息子をティモシー・ハットン(オスカー助演男優賞)。長男が水難事故で水死し、自分だけ生き残った次男は罪の意識から逃れられない。自殺未遂で4ヶ月入院したあとも不安におしつぶされそうになる。長男を溺愛していた母の、次男をみる視線は冷たい。父は母に気兼ねしてばかり、いいたいことは遠まわしにしかいわない。息子はガールフレンドができたがそれもつかの間、彼女は自殺した▼家族はちぐはぐ、気持ちはバラバラ、お互いがお互いのことを思っているのに、からまわりばかりしている。息子の不安定な神経が伝播し、父も母もはれものにさわるようだ。なにしろ息子の手首には何本もの傷が生々しく残っている。精神科医に通うことにしたが、とりたてて効果があるようにはみえない▼レッドフォードはこういうシーンを積み重ねていく。物静かであるから目立たないが、毎日がかなりしんどい状態であることがじわじわ伝わってくる。母親が夜中に気がつくとベッドがからだ。父親がいない。不審にかられ探すと、かれはひとりテーブルの前で泣いていた。さめざめとした悲しさが蒼いスクリーンにただよう。そして妻に言ってしまう「君を愛しているかどうかわからない」妻は呆然。荷物をまとめ夜明けとともにタクシーで家をでた▼彼らは結婚して21年である。21年もたてば「もう愛していない」はほとんど了解事項になった夫婦は少なくない。むしろそれが「普通の人々」だろう。愛していようといまいと生活は生活だ。笑い飛ばしてちがう愛の性質を知る。そんな愛情もある。いい人をやめたららくになる、ではないが、感情を分析さえしたら幸福の解がみつかるわけではない。愛していなくてもいいじゃないですか。そんな分厚い「普通の人々その後」をレッドフォードにとってほしかったが、こういう「普通」は彼には鈍感としかうつらないというか、趣味じゃないみたいね。

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