女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2012年4月26日

エヴァの匂い (1962年 恋愛映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジョセフ・ロージー
出演 ジャンヌ・モロー/スタンリー・ベイカー/ヴィルナ・リージ

自然児のエヴァ

 エヴァは超お金持ちだけを相手にする娼婦。ゴーマンとタカビーを絵に描いたような女である。ろくにものもいわずアゴで指し示し、荷物を持てだの、ホテルはスイートでないとだめだのと好き放題の注文をつける。エヴァのためにやりくり算段して金をつぎこむおじさんがいじらしい。作家(スタンリー・ベイカー)がエヴァに出会う。恋人(ヴィルナ・リージ)がいるのにはやくも男は上の空になる。エヴァにじらされ天にも昇る一夜を過ごした男に、エヴァは情け容赦ない請求書をつきつける▼たいへんである。やっと金をつくったら払い方がケチくさいとバカにし「そんなはした金いらない」なんだと。男はこれみよ、と札をばらまくがエヴァは歯牙にもかけない。自分のネグリジェを着て朝を迎えているエヴァをみて、男の恋人は嘆きのあまり自殺に走るが、エヴァは眉も動かさない。尽くしたあげく零落した男は、こんな人間冷感症の女は殺すしかない。ある夜エヴァの寝室に忍び込む▼のどをしめかけたのにエヴァが気づくと「頼む、お願いだ」とヨリをもどそうと懇請する。ある種の壮観である。観客はジンとくる。ところが怒髪天を衝いたエヴァは壁にかけてある乗馬用のムチを取り、ビシャビシャ引っぱたいて「出てお行き」叩き出すのだ▼ジャンヌ・モローは小柄だ。手も足も長くはなく、お腹のでていないキューピーみたいな体型で、歩き方に独特のくせがある。ややガニ股ふうでちょこちょこ走るさまは子供みたいだ。ルイス・ブニュエルは初めてジャンヌをみたとき「ジャンヌの歩き方に胸がときめいた」と言う。この映画のジャンヌは確かに美しい。柄にあった役をえた女優の強みがいかんなく発揮されている▼エヴァは大好きなお風呂にゆったりつかり、お気に入りのレコードとプレーヤーをどこに行くにも持ち歩き、一人になるとビリー・ホリデーの「柳よ 泣いておくれ」をかけて機嫌がいい。男が聞く「いちばん好きなものは何だい」「お金よ」「なにに使う」「レコードを買うの」無邪気なほど屈託がない。「エヴァの匂い」がつくられた半世紀前、女性のゴールは良妻賢母だった。いいたいことをいい、やりたいことをやり、だれはばからない経済力をもち、男をコケにし振る舞いたいように振る舞う、そんな反社会的女は娼婦に設定する以外、おさまりようがなかったのかもしれない。しかし娼婦だろうと孤独だろうと、生きる姿勢に無理も屈託もない自然児のようなエヴァに、女はどこかで羨望しなかったろうか。冷酷に男を哄笑する売春婦が、お手伝いさんにみせるやさしい笑顔がよかった。

Pocket
LINEで送る