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シネマ365日

2012年4月27日

M★A★S★H マッシュ (1970年 戦争コメディ映画)

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監督 ロバート・アルトマン
出演 ドナルド・サザーランド/エリオット・グールド/トム・スケリット/サリー・ケラーマン

攻撃する「笑い」 

 「マッシュ」とは移動米軍外科病院。そこに3人の軍医が派遣される。ホークアイ(ドナルド・サザーランド)、デューク(トム・スケリット)、トラッパー(エリオット・グールド)だ。手術しながら冗談に興じ、胸をかっさばき、あっというまに縫合する一流の腕の外科医たちだが、三度の飯より規則違反と女とセックスが好き。女性将校のベッドシーンを軍放送で流し、彼女の金髪が本物かどうか、シャワー中のテントをまきあげ、彼女にはホットリップス(熱い唇)というあだ名を進呈する▼常識の通用しない野戦病院で嵐のように切ったり貼ったりするのだか、彼らは笑うことで神経のバランスをとっているのだ、とはしかしあまりに消極的な解釈だろう。ロバート・アルトマンの、このブラック・コメディの真意はなんだろう。笑いのめすことではないか。戦争映画なのに「マッシュ」には戦闘シーンがひとつもない。そんなことにアルトマンは興味ない。彼はひたすらキャンプと手術室と山々がつらなる殺風景な環境に、暴走外科医たちのいたずらと哄笑を響きわたらせるのだ▼彼らはみなたくましく仕事し、医者である限り敵であろうと命を助ける使命感の持ち主。ところがそれをふりかざすのが大嫌いときている。といって組織や戦友を冷笑する皮肉屋でもなく、それどころかフットボール試合を開催して賭けに買ってやろうと熱く燃える男たちだ▼彼らがきらいなのは硬直した思考や精神が、ともすれば「マジメ」という仮面をかぶって真実を隠し、人をあぶなくすることだ。現にこの戦争はどうだ。頼みもしないのにだれがおれたちをまきこんだ。映画のどこにもだれにもマジな反戦はあらわれていないが、こんなばかばかしいこと、やっておれるものじゃないぜ、という彼らの日常感覚の正しくまともなこと。異常な状態に目を曇らさないためには笑いのめすにかぎる。そこは医者だから手術室にはいってしまえば階級もヘチマもない、手術室以外でもそうであるのが問題なのだが、アルトマンは平気で無視させる。なぜならこの場合アルトマンが意図するのは攻撃の笑いである。なにかをたたきのめすために笑いのめすのだ▼現実にこんなやつばかり職場にいるとたいへんだし、セクハラもひどいものなのだけど、復員がきまったとたん、つまり、もう笑いのめす必要がなくなったとたん、ホークアイやデュークの表情を、いっぺんに気抜けしたように平凡にしてしまったところにアルトマンのブラック感覚が踊っている。

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