女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2012年4月30日

8人の女たち (2002年 舞台劇映画)

Pocket
LINEで送る

監督 フランソワ・オゾン
出演 文中に含む

香ばしい女たち

 原案はロベール・トマの舞台劇。雪に閉ざされた邸宅で起こる密室殺人。被害者はその家の主人マルセル。容疑者は8人の女たち。マルセルの妻ギャビー(カトリーヌ・ドヌーブ)、母マミー(ダニエル・ダリュー)、ギャビーの妹オーギュスティーヌ(イザベル・ユペール)、マルセルの妹ピュレット(ファニー・アルダン)、メイドのルイーズ(エマニュエル・ペアール)らだ▼オゾン監督でなくとも、これだけの女優陣相手には正攻法しかないと思うだろう。堂々と押しまくる演出である。なにしろ当時85歳のダニエル・ダリューが歌って踊るのだ。ほかの女優もまけておれない。筋としては犯人を追い込んでいくはずなのだが、オゾン監督はこの顔ぶれではもっと楽しまなければウソ、とばかり事件解明もさることながら、登場人物それぞれがもつ弱点を意地悪く、かつ照り焼きチキンみたいに香ばしく焼きあげていく。女優らは自分にスポットがあたるその場面をどう演じてやるか、舌なめずりしながら待ち構えている▼8人の過去と正体がバラされる。仮面妻・金の亡者・うしろぐらいメイド・いびる女とワルの女。ところが大なり小なり、これらの要素をみなが持っているしたたかな8人なのだ。女優の肢体とはいわば全身の表情のようなものだ。ベティ・デイビスのふてぶてしい歩き方、オードリー・ヘップバーンのまっすぐな背中とか、美貌であるとかないとかもさることながら腕や背中、歩行、声や身のこなしなどが得も言えぬ魅力を放つ女優がいる▼それでいえば「8人の女」のファニー・アルダンがくねくねと身をよじらせるときの長い腕や脚の美しさ。エマニュエル・ペアールのちょっとそり気味の反抗的な上唇。ドヌーブは美貌の賛辞は聞きあきた、このテコでも動かない貫禄をみてちょうだい、とでもいう重々しさ。イザベル・ユペールは「従妹ベット」的いやがらせの権化として登場するが、骨格美人とでもいうべき彼女の体型が大いに効果的だった▼オゾン監督はゲイだが同性愛の扱いもここではユニークだ。ギャビーとピュレットがその気になって忙しいさいちゅう、雪の状況を外へ確かめにいった一同がそろって部屋に入ってくる。あっけにとられ「なにしているの?」ギャレット「お話よ」「床で?」と長女「寝転んで?」と次女。こんなコミカルなセンスがいたるところ発揮される。「8人の女たち」はベルリン国際映画祭銀熊賞、それも8人の女優全員に、という粋な計らいだった。

Pocket
LINEで送る