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特集「ディーバ(大女優)」

2012年5月2日

特集 ディーバ(大女優)1 イングリッド・バーグマン カサブランカ (1942年 恋愛映画)

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監督 マイケル・カーティス
出演 ハンフリー・ボガード/イングリッド・バーグマン/クロード・レインズ

カサブランカに乾杯

 今や古典となった「カサブランカ」だが、スタートは惨憺たるものだったとバーグマンは自伝で振り返っている。プロデューサーと脚本の意見がまとまらず、筋書きが最後まで決まっていなかった。バーグマンがハンフリー・ボガード扮するリックと、ポール・ヘンリード扮するラズロと、どっちを愛するのかと監督にきくと「まだわからない。どっちつかず、うまくやってくれ」だったから推して知るべし。撮影は混乱をきわめボガードは怒って自分のトレーラーに引っ込んでしまった▼そんなトラブルつづきとは思えない、がっしりした映画に、アメリカ映画協会が選ぶ「アメリカ映画ベスト100」の2位にまでなっているのはなぜだろう。監督も役者もスタッフも、みなプロ中のプロだったからだろう。バーグマンはハリウッドにきて3年、デヴィッド・セルズニックやヴィクター・フレミング、スペンサー・トレイシー、ラナ・ターナーらハリウッドの綺羅星のような映画人と仕事をし、しかも女優たちの垂涎の的だったヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」の主役マリアが決定するかもしれないという緊張のなかにいた▼マリアが決まったのは「カサブランカ」の撮影終了直後だったが、イングリッドが緊張していたのはそれだけではなかった。恋人役はなにしろ大スター、ボガードだった。ボガードは礼儀正しく親切で、キスシーンさえあったがイングリッドは緊張のあまり冗談もいえず、ボガードと話すかわり「マルタの鷹」を何度もみて、ボガードの人となりや持ち味を理解したくらいだ。むしろ20歳でボガードと結婚し、25年間仲良く添い遂げたローレン・バコールのほうがイングリッドとは不思議な因縁で結びつく▼世界中で大ヒットした「サボテンの花」の公開は1969年だったから「カサブランカ」の27年後である。「サボテン」をブロードウェイで演じ大喝采を浴びたのがローレン・バコールだった。その映画化の主役は当然自分に回ってくると信じていた。決まったのはイングリッドだった。バコールはカンカンになり、自分より若い女優が選ばれたのなら諦めもつくが、10歳も年上のバーグマンとは。怒りをぶちまけた▼バコールの憤慨はおさまっていない、とバーグマンは耳にした。ちょうどブロードウェイでバコールは「アプローズ」に出演していたときで、バーグマンは楽屋を訪ねることにした。いっしょにいたバーグマンの女友達はふるえだし、やめてくれと頼んだ。楽屋口で名を聞かれたバーグマンは「彼女が世界でいちばん嫌っている女が会いにきたと伝えて」と頼んだ。ドアの隙間から鏡に映っているバコールの顔が「ニタ~」と笑い、駆け寄ってきてバーグマンを抱きしめた。ボガードが愛したのはこんな女だった▼どうしよう。粗筋を書こうか。まあ「君の瞳に乾杯」とか「サム、弾いて、あの曲を。時の過ぎ行くままに、よ」とか。それにこれも極めつけだ。リックが女に「このごろ冷たいわ。昨夜はどこにいたの」「昔のことは覚えていない」「明日はどこに?」「先のことは考えない」などの台詞は知られていても、かえってまともなストーリーは埋没しているかもしれないからさわりだけを少し。独軍にまだ占領されていない仏領モロッコの都・カサブランカはアメリカにわたる亡命者たちのたまり場だ。ナチの手をのがれリスボンから亡命するためには一度は立ち寄らねばならない。カサブランカで酒場を開くリック(ハンフリー・ボガード)に、ドイツ人を殺して旅券を奪ったウガルテという男が旅券を預ける。ドイツ軍の将校は警察署長ルノー(クロード・レインズ)に命じウガルテを逮捕、殺してしまう。その直後反ナチ運動の首謀者ラズロが妻イルザ(イングリッド・バーグマン)と店に来る。イルザはそこがリックの店だと知って驚く。二人にはパリの出会いがあった▼感情のトワイライトゾーンが黙って向きあう二人の表情に交錯する。「男のなかの男」であるリックが、自分を置き去りにした女に仕返ししてやるとむきになる。と思うとオレといっしょにここへ残ろう、いっしょにいよう、もうどこへもいくなとバーグマンをかきくどく。女はこんな男をぜったい憎めない。それと警察署長ルノーにご注目。ヒッチコックの「汚名」で、バーグマンとかりそめの夫婦を演じ、繊細な演技でオスカー助演男優賞を獲得した名脇役クロード・レインズが、ボガードを相手に堂々の男ぶりを演じてのける。では「カサブランカに乾杯」

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