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特集「ディーバ(大女優)」

2012年5月8日

特集 ディーバ(大女優)1 イングリッド・バーグマン 黄色いロールス・ロイス (1964年 オムニバス映画)

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監督 アンソニー・アスキス
出演 イングリッド・バーグマン/レックス・ハリスン/ジャンヌ・モロー/ジョージ・C ・スコット/シャーリー・マクレーン/アラン・ドロン

誇り高き車

 ロールス・ロイスと共演するにはこれくらいの主役級でないと役不足だといわんばかりのキャストです。それぞれの持ち味にあった配役ですが、トクをしているのはレックス・ハリスンとバーグマンでしょうか。いちばん割りをくったのはジャンヌ・モローでしょうね。「小間使いの日記」や「エヴァの匂い」の完成度と比べると、なにがよくてこの役を選んだのかわかりません。彼女もロールス・ロイスのオーナーだったからそのよしみでしょうか▼ときは1930年代。第一篇ロンドン編。国務大臣フリントン侯爵(レックス・ハリスン)は若い妻エロイーズ(ジャンヌ・モロー)との結婚記念日に、ピカピカの新車ロールス・ロイスを購入する。ハリスンのまっすぐな背中、スラリとした脚の長い、リュウとしたダンディぶりがみものです。妻の浮気にうすうす気づいているが、生まれながらの英国貴族は野暮な話題はもちださない。逃げよう、逃げようとする妻をスマートにひきとめ、アスコット競馬場に同行させるが、ロールス・ロイスの車中で妻が情事にふけっているのを目撃。豪華な車は元の展示場に戻される▼二番目はイタリアのジェノヴァ編。アメリカから観光旅行にきたカポネの子分パオロ(J・C・スコット)は、情婦メイ(シャーリー・マクレーン)が街でみかけた中古のロールス・ロイスを気にいったので購入する。カポネの指示がありパオロが一時帰米中、メイは地元で観光客相手の街頭カメラマン、ステファノ(アラン・ドロン)と恋に陥る。ステファノは有名なジェノヴァ観光地を案内し、青の洞窟で水着姿の二人が思いをとげる。見栄っ張りのアラン・ドロンが、純情とはいえ使い走りみたいな若者役をなんで? 答えは簡単これが彼のハリウッド第一作で、どんな役だろうととにかくハリウッドでスクリーンデビューする、が最優先だったからです▼三番はトリエステ・ユーゴスラヴィア国境編。時代は1941年、第二次大戦に突入しています。ユーゴスラヴィア王族の表敬訪問に向かうアメリカの富豪未亡人ゲルダ(イングリッド・バーグマン)は、中古ながらどことなく気品をたたえたロールス・ロイスにひかれ購入。それをホテルのロビーで聞いていた対独パルチザンの頭目ダビッチ(オマー・シャリフ)が同乗を願い出て、国境を越えようとする。ゲルダは無事ダビッチを送り届けるが、ドイツ戦闘機の爆撃をうけた小村の抵抗軍はみるみる負傷者続出、ゲルダはロールス・ロイスで山中を疾駆して負傷者を救出する。ダビッチとの短い交流を胸にゲルダは帰国。実情を国連で報告し必ず外交を変えると約束。ゲルダとともにロールス・ロイスは傷だらけになりながらも堂々、名誉の帰国をはたします▼この富豪夫人はかなりくだけていて、爆撃でガラスの破片がとびちるホテルもなんのその。全員が避難したレストランで「わたし夕食がまだなの」トレーからうまそうにごちそうをむしゃむしゃ、シャンペンは自分であけてグビッ。優雅な白鳥のようなドレスから、抵抗軍の男物のシャツとパンツに着替えたところは「誰がために鐘は鳴る」のマリアを思い出させてくれる。一台のロールス・ロイスの約10年の変遷とそれをともにした主人公たちの物語でした▼オールスター映画にありがちなおおざっぱな構成ではなく、細部まで行き届いた(たとえば侯爵邸の内部など、ヴィスコンティにまけない豪華さです)きめこまかく、ユーモラスな作りで見応えのある映画にしたのは、監督自身がロールスを乗り回すイギリス上流階級の空気を肌で知り尽くしていたからでしょう。アンソニー・アスキスの父は第二次大戦開戦時の首相ハーバート・ヘンリー・アスキス。アンソニーはオックスフォード・ベリオールカレッジに学びました。オックスフォードのなかで最も人気のあるカレッジで、雅子妃が外交官時代留学したのもここです。ハリポタシリーズや「英国王のスピーチ」(オスカー助演女優賞候補)で活躍中の女優ヘレナ・ボナム・カーターの大叔父にあたります。

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