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シネマ365日

2012年5月14日

隠された日記 母たち、娘たち (2009年 家族映画)

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監督 ジュリー・ロペス・クルヴァル
出演 カトリーヌ・ドヌーブ/マリナ・ハンズ/マリ・ジョゼ・クローズ

ほそい後ろ姿

 ジュリー・ロペス・クルヴァルは女性監督。37歳のとき「隠された日記」を撮った。海辺の光景がきれいなだけで、他にまったく刺激的なシーンのないまま始まったこの映画。いったいどこに落としこむのだろうといぶかっていると、クルヴァル監督は後半ぐんぐんアクセルを踏み込み、いつのまにか仕様は一変「うーん」とうなるミステリーに仕上がっていました▼オドレイ(マリナ・ハンズ)は高学歴・高収入。仕事に充実感はあるが妊娠して実家に帰郷し、まだ打ち明けられないでいる。母のマルティーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)は医師。その世代としては仕事にも家庭にも恵まれた稀な女性だが、思春期に母に棄てられた心の傷が癒えず、オドレイに母親らしい情愛を示せない。彼女の母ルイーズ(マリ・ジョゼ・クローズ)が生きたのは1950年代。夫が経営する洋装店で、自分もデザインしたり生地を選んだりしたいというルイーズのささやかな望みは「女がする必要ない」という一言で叶えられない。自分名義の口座をもつのさえ夫の許可が要った。自由に憧れたルイーズは子供を捨て出ていった、とマルティーヌは聞かされて育った▼オドレイは祖父母のいた家の台所で祖母の古い日記をみつける。おばあちゃんのレシピがある。その通りつくり「おばあちゃん、おいしいよ」とつぶやく。祖母は子供を愛し、家庭を愛し、夫につくした女性だった。なぜ家を出たのだ。母の日記があることを知ったマルティーヌは思い切って日記を開く。ページの間に大金が残されていた。かたくなに封印していた母の過去と記憶が徐々に蘇る。母のトランクは家に置いてあった。お金も服ももちだしていない。父は母を一晩探したというが警察に届けはしなかった。あの夜帰宅した父の手は汚れていた。そして父に聞かされた「お母さんは出て行った。もう戻ってこない」マルティーヌは驚愕の事実に思い当たる「お父さんは探さなかった。探す必要などなかったのよ」▼母は自分を棄てたのではなかった、レシピを書き、おいしいものを食べさせようと、可愛がって、可愛がってくれていたのに生を絶たれたのだ。激しい悲しみがマルティーヌを襲う。カトリーヌ・ドヌーブが距離をおいた愛情を冷静に演じている。ラスト。オドレイが選んだエッフェル塔の柄のドレス(おのぼりさんみたいな服)を着て、うれしそうに娘に笑いかけるのが絵になるのもドヌーブだからか。ルイーズのマリ・ジョゼ・クローズの引き締まった表情もいい。窓から、浜辺からひとり海をみているルイーズ。自由を抑圧された女性の細い後ろ姿だった。

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