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シネマ365日

2012年5月18日

砂 塵 (1939年 西部劇映画)

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監督 ジョージ・マーシャル
出演 マレーネ・ディートリッヒ/ジェームズ・スチュワート

歌と美脚のエンタメ精神 

 ディートリッヒ初の西部劇。酒場の歌手ディートリッヒが、酒場のオーナー兼いかさまポーカー師と組んで、人のいい牧場主から土地と牛をだまし取る。怒った牧場主は保安官に訴えるが、保安官は逆に殺されてしまう。いかさまオーナーは悪徳町長をだきこんでやりたい放題、飲んだくれを後任保安官に任命するが、彼は死んだ保安官の息子(ジェームズ・スチュワート)がまもなくこの土地にくることを知っていた。息子は二人といない銃の名手だときいていたのだが、馬車から降りた男はカナリアのはいった鳥かごとパラソルを持ち、銃は嫌いだといって身におびてもいない男なのだ▼西部劇のパターンを地でいく大活劇というか、ディートリッヒが酒場の鉄火肌の女を演じ、ジェームズ・スチュワートは法と秩序を守る正義の味方。月光仮面西部劇版である。優男はみてくれだけ、いったん銃をとればどんなガンマンもピタリとだまる必殺必中の腕。ディートリッヒは始め彼をバカにしながら、だんだん惹かれていくというお定まりのプロセスをたどり、女同士の大ゲンカ(かなり長く5分くらいプロレスをやる)ではスカートがめくれあがり、美脚丸出しの大暴れ、最後の銃撃戦にも町中の女が手を組んで酒場に乗り込む見せ場がある。ディートリッヒらしく愛と平和のハッピーエンドには無縁の結末だが、大いに歌は歌うし美脚は披露するし、大エンタメ精神を発揮している▼ジェームズ・スチュワートはこのとき「わが家の楽園」(1938)「スミス都へ行く」(1939)と絶好調。そもそもゴシップとは無縁、浮いた噂も皆無、悪役を演じたことは一度もなく、夫人の回顧によればどんな美人とラブシーンを撮ってもすぐ家に帰ってきたというこの俳優について、ディートリッヒは「彼は迫真の演技でラブシーンをしているときでも、まるで片方だけ靴をはき、もう片方を探しているかのような印象を与えた」と自伝に書いている。それを言ったら「どういう意味ですか」と真面目なジミーがさらに大まじめに聞き返したものだから、概してアメリカ人のパートナーはユーモアがわからない、話があわなかったとバッサリ▼彼女のエッセイ「ディートリッヒのABC」でもっともスペースをとっている項目は「美」と「夫婦愛」の他は、意外かもしれないが料理のレシピだ。彼女の役柄の多くが冷酷美人だったみかけによらず、ディートリッヒは俳優仲間の世話を嫌がらずにみる、とくに食事によびおいしいものを食べさせ、元気づける面倒見のいいことでは定評があった。自分でも料理は大好きだと無邪気に自慢している。こんなディートリッヒが、家庭的なことにかけては人後に落ちないジミーと、話が合わなかったというのだから皮肉だ。

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