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シネマ365日

2012年5月24日

ク ロ エ (2011年 サスペンス映画)

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監督 アトム・エゴヤン
出演 ジュリアン・ムーア/リーアム・ニーソン/アマンダ・セイフライド

暴走する疑心暗鬼

 そんなこと起こるはずがない、と思いながら、いやひょっとしたら、という疑念がふとよぎる、一度疑いだすと「もしかしたら、もしかしたら」とつぎつぎ自分で思い当たることをこしらえだす、そんな「魔の刻」ってあるのでしょうね▼女性監督アンヌ・フォンテーンが、倦怠期の熟年夫婦を扱った「恍惚」(2004)のリメイク。疑惑を増幅させるバーチャル・リアルティーというか、仮想空間というか、本来の自分ではない自分が自分をのっとっていく、鋭い孤独感にさいなまれる、そんな中年女性の脅迫観念にも似たイメージ世界を、アトム・エゴヤン監督がじっくり撮っていく。目に見えない小さい虫がぞろぞろ腕を這い上がってくるような女の皮膚感覚を、一笑に付す男の神経ではこの映画「クロエ」のキャサリンの葛藤や孤独なエロチシズムは、ばからしくてみておれないのである▼産婦人科の女医キャサリン(ジュリアン・ムーア)は大学教授の夫デビッド(リーアム・ニーソン)と息子マイケルの何不自由ない3人暮らし。しかし夫は仕事に、息子はガールフレンドに夢中で自分を振り返ってくれない。取り残された孤独感がひたひたとキャサリンを浸潤していく。若い女子大生から夫へのメールをみたキャサリンは、デビッドが浮気をしているのでは、と疑う。その疑念をぬぐいきれないキャサリンは、娼婦のクロエに夫を誘惑し、夫の対応を逐一報告してほしいと頼む▼クロエの報告はますますキャサリンを泥沼に引きずり込む。おまけにクロエは、わたしの本命は「キャサリン、あなたなの」と告白して迫ってくるではないか。えらいことに…。このあたりになるとキャサリンの混乱ぶりが如実だ。学校では成績優秀な「いい子」で、人生なにごとも順調にきた苦労知らずの女医さんである。クロエに平手打ちを食らわせるなんて、そんな乱暴なことができるわけがない、といって口車にのせて手玉にとって逆にもてあそぶ、そんな莫連女ふう回避術も備わっていない、ついクロエの誘惑にまけてしまい、ますます深い関係を迫るクロエに追い詰められてしまう。女と寝ようと寝まいとおまえの知ったことか、そんなことで脅しにくるとはけしからん、出てこい、いっちょう話をつけてやる、と尻をまくるのは男性的、それもスーパー男性的な感覚であって、この場合のキャサリンは本当にどうしていいかわからず、この写真をネットで流してやる、なんてことになるとどうしよう、先にさきに心配し、ますます途方にくれ、ドツボにはまってしまう▼とうとうデビッドは妻の様子がおかしいと思い始める。キャサリンもまた自分の疑心暗鬼が暴走したことを知り、デビッドは結局浮気なんかしていなかったと、事実を確認して理性をとりもどす。だから夫婦は「めでたし、めでたし」でけっこうなのだが、そうなると自業自得とはいえ、かわいそうなクロエのいる場所はなくなってしまった…「揺りかごを揺らす手」と同じ結果になるのですけどね。レベッカ・デモーネイ姐さんよりクロエに扮するアマンダは可憐ですよ。大きな目がカエルみたいだと自分で言っていますが「マンマ・ミーア」ではメリル・ストリープ、「ジュリエットからの手紙」ではヴァネッサ・レッドグレーブ、「赤ずきん」ではジュリー・クリスティと、大物女優との共演に恵まれています。さきが楽しみな女優さんです。

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