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シネマ365日

2012年5月25日

ポーラX (1999年 怪奇映画)

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監督 レオス・カラックス
出演 ギョーム・ドパルデュー/カトリーヌ・ドヌーブ/エカティリーナ・ゴルベワ/デルフィーヌ・シュイヨー

なんでもいいから決着つけろ 

 高名な外交官の一人息子としてパリ郊外の城館で暮らす作家ピエール(G・ドパルデュー)は母親マリー(C・ドヌーブ)と姉・弟と呼び合う美しい親子。才能ある作家として前途は洋々、出版社は彼にアラジンという覆面をさせ人気をあおっていた。婚約者リシュー(D・シュイヨー)との結婚は目前。ピエールはある日リシューに、黒い髪の女が現れる夢の話をする▼「ポーラX」とは原作者ハーマン・メルヴィルの原題「ピエールあるいは諸々の曖昧さ」からとった頭文字。そうピエールとは曖昧の表象なのだ。黒い髪の女はピエールの腹違いの姉・イザベル(E・ゴルベワ)だと名乗り、東欧の戦火を逃れ難民としてフランスに来たとわかる。ピエールはやみくもにイザベルといっしょに暮らすことに決め(観客には唐突としか思えない)婚約者も母も財産も、お城のような邸宅も棄てて家をでるのだ▼腹違いの姉が現れたくらいで、なんでそういうことをせんといかんのか? もともと世間一般の理屈の通用しない監督だとは思っていたが、あまり生活感情からかけ離れてくるとついぼやきたくなる。ピエールがいうには「自分はこの世を超えていくきっかけを待っている」(つまりいい小説を書きたいってこと?)だから自分を目覚めさせてくれる謎めいた存在(イザベル)に宿命のようなものを感じる。えっ。イザベルってファム・ファタールだったの。ホームレスみたいに現れるのだけど▼イザベルはこれ以上自分がいてはピエールの迷惑になると川に飛び込む。ピエールが助ける。とにかくイザベルが現れてからトラブルの連続だが、ピエールはイザベルと精神的ヘソの緒がきれないみたいであるから(肉体的にも、になるのだが)自分がピエールを守るしかない、とリシューは健気にも決心する。唯一健全な思考を維持するのは彼女です。ピエールが窓ガラスの割れた寒い部屋で描き上げた小説は「妄想と混乱のただの模倣」と出版社に突き返される▼母親マリーは交通事故で死ぬ。自殺かもね。それはそうとして、カトリーヌ・ドヌーブがナナハンみたいな大きなオートバイをぶっ飛ばすのだ。彼女運転できるのか? もう少し現実味のある乗り物にしてほしかったわ。ピエールと近親相姦的親密を監督は映画の冒頭からアピールしていたし、なにしろ2時間以上暗い話ばかりで、もううんざり、なんでもいいから「曖昧さに」決着つけろ。いいたくなるころピエールの殺人とイザベルの自殺でやっとエンドにこぎつける▼あのね。ギョーム・ドパルデューはこの映画のあと2003年黄色ブドウ球菌の院内感染がもとで右足を切断した。「ポーラX」のときの美しい肢体は28歳のとき。37歳で没する。演技の名門一家に生まれ、将来を嘱望されていた彼にあまりに辛い現実だった。彼はいちはやくスクリーンで未来を生きてしまったのかもしれない。

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