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シネマ365日

2012年5月27日

ある貴婦人の肖像 (1997年 文芸映画)

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監督 ジェーン・カンピオン
出演 ニコール・キッドマン/ジョン・マルコヴィッチ/マーティン・ドノバン

一発蹴りをいれろ

 「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督です。彼女の映画のつくりかたってとてもていねいで詩情がありますね。ニコール・キッドマンもそこが気にいったらしく「イン・ザ・カット」では自分が製作、監督をカンピオンに任せました。「ある貴婦人の肖像」は原作ヘンリー・ジェームズ。舞台は19世紀。カンピオン得意のコマがそろっています▼裕福なイギリスの叔父の家にいる、アメリカ人の娘イザベル(ニコル・キッドマン)は、貴族との結婚をすすめられながら応じようとしない。従兄弟のラルフが彼女に味方し父を説得する「人は豊かに生きるべきです」「豊かって何だね」「望みどおり生きることを豊かというのだと思います」。ラルフはイザベルを愛しているが結核のため長生きできないと知り、陰ながら彼女を守ろうとする▼キッドマンは透き通るような肌にきらめく瞳。彼女の目はどちらかといえば小さく三白眼で、いわゆるきれいな瞳とはいえないのだが、光りを放つ力のある目がいきいきしているのだ。ラルフは自分が相続する莫大な遺産を、イザベルにもわたるようひそかに配慮する。「望み通り生きる」はずだったイザベルは世間知らずの悲しさ、芸術愛好家でただのディレッタント、財産を狙う結婚詐欺みたいなオズモンド(J・マルコヴィッチ)にひっかかる▼悲劇である。オズモンドの精神的虐待のためイザベルは自分を見失い、空虚な贅沢に囲まれた生きがいのない生活に埋没し、快活さは掻き消えてしまう。再会したラルフは「妻の鏡、それで満足か。エセ美術愛好家のお守りをして」とイザベルの奈落を見抜くが彼女は意地で本心を隠す▼ラルフ危篤の電報にもオズモンドは帰省を承知しない。イザベルは言うことは言葉やさしいがやることは狂っているハゲのマルコヴィッチに、どこまで牙を抜かれたのか、観客をイライラさせたあげく監督は救いの使者をイザベルに使わす。義理の妹はイザベルのあまりの純粋さ(というか無知さ)に呆れ兄の本性を教えるのだ。このあたりヘンリー・ジェイムズのドラマツルギーの面目ですね▼作劇を盛り上げる重要な人物は他にも登場するのですが、とりあえずイザベルはロンドンに急行し息を引き取ろうとするラルフの死に目に間に合う。さてイザベルはローマにつまり夫のもとに帰るのか。原作では義理の娘を引き取りに帰るのですが、それ以上の結論はだしていない。読者に観客に任せるというスタンスですが、19世紀という時代ではあってもどこかに反逆を予感させますね。そりゃ一度は帰ってマルコヴィッチ(これがまあ憎らしいくらいうまい)に引導を渡さないと、望みどおり生きることのできる経済力を残してくれた、ラルフの愛と英明さはむなしくなるわけでしょ。カンピオン監督、イザベルのお尻に一発蹴りをいれてやりな。

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