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シネマ365日

2012年5月28日

素直な悪女 (1956年 恋愛映画)

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監督 ロジェ・ヴァディム
出演 ブリジッド・バルドー/クルト・ユルゲンス/ジャン・ルイ・トランティニャン/クリスチャン・マルカン

バルドーの光と影 

 ロジェ・ヴァディムはカバーガールをしていた18歳のBBと結婚した。「素直な悪女」のときBBは22歳。ブリジッドは裕福な家に生まれバレエだ、歌だと習い事をし、学校の成績はいつも最後から三番以内。グレタ・ガルボに似た妹に容貌コンプレックスがあり、とくに気にいらないのはソリ気味の前歯だったと自伝にある▼ヴァディムはいみじくもいいあてている「BBは演技しない。BBは存在するのだ」後年「我が妻バルドー、ドヌーブ、J・フォンダ」という、世の男性が、怒りと妬みをこめてソッポを向くような評伝を書いたヴァディムは、最も多くのスペースをバルドーにさいている。ブリジッドは「成功して人の注意が自分に集まれば集まるほど、ますます自分だけが大切にされることを要求した。それはある種の支配好きの女とはちがいもっと微妙で、他人への飽くことのない渇きだった。絶えずなにかを映していなくてはいられない鏡、とでもいおうか」▼この「鏡」の役を果たすものが「女優」であり「男」だったのだろう。「素直な悪女」を一紙としてほめたものはなかったが(バルドーの記憶力はすごく、特にフランソワ・トリュフォーが「カイエ・デ・シネマ」でけなしたと自伝に残した)「彼女がスクリーンに登場すると人々はあわてた」とヴァディムは書いている。どんな評論家より観客の反応は素直で、バルドーがサントロペの陽光の下に全裸をさらしたことに「あわてて」応えたのだ▼悪女だろうと男たらしだろうと、なんの分野でもいいが、抜きん出た女というのはなぜか悪びれない。BBの男性遍歴も「気まぐれとしかいいようがなかったが、それがバルドーなのだ」とヴァディムはあっさり匙を投げ、それ以上介入する無駄をはぶいている。ブリジッドのためにつくった「素直な悪女」は、だから筋書きなんか二の次で、裸にはするし、美脚を露出させるためにいきなりマンボを踊らせるし。またバルドーもこういうシーンではじつに生き生きする。酒場の主人エリック(クルト・ユルゲンス)、内気な青年ミシャエル(ジャン・ルイ・トランティニャン)、美青年アントワーヌ(クリスチャン・マルカン)らがいれかわり、たちかわりミエミエなほど脇を固めている▼ブリジッドは16歳で最初に自殺しようとしてから、何度となく未遂を繰り返す。深夜公園にいき手首をグサグサに切って昏倒していたところを発見されたときはさすがに新聞沙汰になった。黄金律のように整った肉体の内側にはほころびやすい、感じやすい神経が走っていた。光の多いところに集まった強い影だったのかもしれない。

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