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シネマ365日

2012年5月30日

軽 蔑 (1963年 恋愛映画)

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監督 ジャン=リュック・ゴダール
出演 ブリジッド・バルドー/ミシェル・ピコリ/ジャック・パランス

「はっきりしない・させない」ゴダール流 

 「左翼かぶれの薄汚いインテリにはイライラする、彼(ゴダール)はヌーヴェル・ヴァーグの旗手でわたしは古典的作品のスターだった」とバルドーの自伝にある。当時ゴダールはアンナ・カリーナとの愛に行き詰っていた。歩き方までカリーナを引き合いにだされるのに「愉快な話だ。私がカリーナの真似をしなければならないというのだ。冗談もほどほどにしてもらいたい。放っておいてちょうだい」とむかついている▼生真面目なゴダールはいつも帽子をかぶっていた。バルドーの毒舌は「ヌーヴェル・ヴァーグとは帽子をかぶることだったのである。ゴダールと彼の帽子はいつも、よくききとれない声でぼそぼそとわけのわからないことを言っていた。台詞は平板に淡々と暗唱しなければならなかった。確かめたわけではないがたぶんアンナ・カリーナが怒るときはそうなのだろう」バルドーがピコリらと冗談をいっているときにも、ゴダールは硬い表情を崩さなかった。バルドーは自分がよそ者のように感じ、ゴダールの指示を忠実に実行し、自分自身の奥深い部分をまったく出さず、恋に落ちる可能性は皆無だった…▼映画は登場人物らがカプリ島に出発する以前と以後で、前後編にわかれる。女優のカミーユ(バルドー)と夫で脚本家のポール(M・ピコリ)は、アメリカ人のプロデューサー、ジェレミー(J・パランス)と会う。プロデューサーの言いなりである夫にカミーユは失望する。ジェレミーが招聘したカプリ島に「行く・行かない」「あなた次第だ・君次第だ」とか、グジャグジャばかり言って「もう愛していない」「僕を愛してくれ」「あなたを軽蔑するわ」「理由は」「死んでも言えないわ」▼このへんがゴダールのゴダールたる台詞なのでしょうが、こんな映画のどこがオモロイのじゃ。それをみてしまったのはBBと芸達者なピコリのかけあいだったからだ。ジャック・パランスが札束で頬ひっぱたきそうなプロデューサーであるのは、ハリウッドに対するゴダールの意識そのものだろ。ポールは折角ジェレミーに「オレは金でいうことなんかきかない」とタンカを切ってカミーユの愛を取り戻そうとするのに、カミーユはさっさとジェレミーと車でローマに行っちゃうのだ。その途中事故で二人とも死ぬ。軽蔑の理由は明らかにされずじまいだ。ゴダール得意の「そんなことどうでもいいのだよ」ってことか▼カプリ島の引き締まった映像がいい。ロケに使われたのはマッスーロ岬の先端に突き出た別荘。ここでフリッツ・ラングがいうオデッセイだ、ペネロペだとかはこのロケーションだから説得力を持つ。ラングはオーストリア出身の監督で、アメリカにわたり「飾り窓の女」「暗黒街の弾痕」などフィルム・ノワールの傑作を撮り、ゴダールに懇請されて「軽蔑」で本人の役で出演した。もうひとつ劇中の「チチネッタ撮影所」とはイタリアの国立撮影所で「甘い生活」「山猫」「ベン・ハー」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「愛の嵐」など、映画史に残る傑作がここで撮影されている。

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