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シネマ365日

2012年6月29日

イーオン・フラックス (2005年 SF映画)

監督 カリン・クサマ
出演 シャーリーズ・セロン/ソフィ・オコネドー/ソフィ/アメリア・ワーナー

美少女戦士の遺伝子

 シャーリーズ・セロンは真面目が服を着て歩いているような女性だ。社会意識・問題意識のかたまりみたいなところがあって、コミックが原作の「イーオン・フラックス」でも「死すべき人間は生きている間に使命をはたすべきだ」と真摯なコメントをどこかで発表していた▼カリン・クサマ監督は母親が函館出身の日系の女性監督、映画の随所にタタミ、番傘など和風テイストがちりばめられているが、セロンがいちばん苦労したのが和風は和風でも相撲の股割り。バレエで鍛えた体のやわらかいセロンだからできたものの、本物のお相撲さんだって、股割りの稽古が辛くて途中でやめる人、多いのですよ。「モンスター」「スタンドアップ」と続いた社会派の話題作から一転、女007もかくまでと思う未来アクション映画に、頑張るセロンは挑戦した▼スタントもあっただろうが、セロンはほとんど自分でやったと言っている。恵まれた肉体というべき180センチの長身に長い手と脚、それを黒い全身スーツにぴったり包んだアクションは、なんとなく華麗なる振付ふうでしたよ。同じく努力の人「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマンのバレエシーンがスリラーふうで、ちょっと痛々しかったのに比べ、こっちは「イーオン・リラックス」にタイトルを変えてもいいほどだ▼さて「バイオ・ハザード」のアリスといい「イーオン・フラックス」のイーオンといい、なんでこう格闘技好きな女優と映画がふえ、しかもそれらはヒットするのだろう。世界中の女と女優は暴れたい欲望にたぎっているのか。彼女らは「美少女戦士セーラームーン」の孫かひ孫か玄孫(ヤシャゴ)か。ルワンダで難民の命を救うことに挺身する、ホテルの支配人一家を描いたシリアスな映画「ホテル・ルワンダ」で、アカデミー助演女優賞にノミネートされたソフィ・オコネドーまでが「いいわよ、セロン、おもしろそうね」とばかり、足の指が手の指と同じになっているスゴ腕の女戦士になって登場しているではないか▼本筋に移ろう。2011年人類がウイルスに感染し、99%が死滅した400年後の2415年が舞台だ。科学者トレバー・グッドチャイルドが開発したワクチンで全滅を免れた人類の500万人が、汚染した外界から隔絶した壁のなかに、都市プレーニヤを構築し、平和に暮らしていた。しかしグッドチャイルド家の子孫と科学者で構成された政府は秩序維持と称し圧政を敷いていた。反政府組織モニカンは、独裁体制の転覆を図り最強の戦士イーオン(シャーリーズ・セロン)を政治組織のトップ暗殺に送り込む▼超人的な体技を駆使して、機構の中枢に入り込んだイーオンと相棒のシサンドラ(ソフィ・オコネドー)は、まあ紆余曲折はあるのですが、プレーニヤの市民とは残されたDNAを用いて政府が生産したクローン人間であることがわかる。グッドチャイルド家の権力機構を維持するため、自然出産は絶滅においやられていたところ、イーオンの妹が妊娠(このあたりわけがよくわからんが)、それゆえ政府の暗殺者に殺害されたことが判明する▼幾何学的な建築物の内部、無機質なオフィス、色彩も香りも感じさせない生命感のない事務的な環境は、どことなくオーソン・ウェルズの「審判」を思い出させた。あれほど不気味さは徹底していないものの、カフカの意味不明ともとれる迷宮世界ふう雰囲気があったけど、そこまでカリン監督は考えていなかったみたいで、大決戦が行われるのは桜満開の庭というカラフルな設定。頭蓋骨にノリで貼りつけたみたいなセロンの短い黒髪がちっとも乱れないとか、小さなパチンコ玉のような爆弾が口笛でコロコロ集まってきて壁に這い登り爆発するとか、まあいろんな仕掛けで飽きさせず、けっこうでございました。