女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2012年7月9日

天使と悪魔 (2009年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ロン・ハワード
出演 トム・ハンクス/ユアン・マクレガー/アイェレット・ゾラー/アーミン・ミューラー・スタール

飽きさせない仕掛け

 出てきたのはネズミ1匹だったけど、大山鳴動させる仕掛けがまあ、イルミナティあり、反物質あり、ガリレイあり、サン・ピエトロ大聖堂あり、教皇選挙戦あり、もともと講釈の多い物語に加え、つぎつぎめくられるカードの盛沢山なこと、このあたりの巧妙さは、硬軟のスキルをあわせもつロン・ハワードならではでしょうか▼「ダ・ヴィンチ・コード」の続編です。監督主演は前作通り。トム・ハンクスのハーバード大学のロバート・ラングドン教授再登場です。舞台はヴァチカン。教皇の病死とともに新教皇の選出(コンクラーベ)が行われようとしているところへ、次期教皇最有力候補の4人の枢機卿が誘拐された。犯人は400年前に弾圧された秘密結社イルミナティの復讐のためだと言い、1時間ごとに1人ずつ惨殺すると予告してきた。同時に原子核研究機関で開発に成功した「反物質」(核エネルギー以上の破壊力をもつ)を盗み出しており、ローマを吹き飛ばすという▼4人の枢機卿は「土・空気・火」を表す烙印を押され、すでに3人が死体となって発見されるが犯人の手がかりはない。急遽アメリカから招聘されたラングドン教授は核研究所のヴィットリア教授(アイェレット・ゾラー)の協力のもと、歴史資料を解読しつつ犯行の意図をさぐっていく。ヴァチカンの資料室の膨大な蔵書、ガリレオの原書、古典文献の宝庫が映像ならでは、の迫力でスクリーンに映される。こういうプロセスを手抜きしないでちゃんと作りこむから、映画が軽くならないのよね▼物語は二転三転します。反物質はどこに隠されたのか。教会内で進むコンクラーベは成立するのか。カトリックの総本山、サン・ピエトロ大聖堂の北側にヴァチカン宮殿があります。カトリックの教皇、世界10億人の教徒を束ねるトップとはすごい権力でしょうね。枢機卿という高い地位ではない、司祭のカメルレンゴ(ユアン・マクレガー)は誘拐犯から教会を守るため、枢機卿たちを避難させるべきだというが、大選皇枢機卿(選挙管理委員長みたいなもの)シュトラウス(アーミン・ミューラー・スタール)はウンといわない。そのときはそのときだというのだから信仰とは結局、度胸がよくなることかと思っちゃう▼刻々時間はすぎ「水」にあたる枢機卿は救出したが反物質の在り処が、懸命の捜索にもかかわらず不明だ。夜中の12時には爆発する。すでに11時をまわった。核研究所に押し入り、科学者を暗殺し反物質を盗み出した犯人が明らかになった。でも彼は単なる殺し屋なのだ。その殺し屋も車のエンジンをかけた瞬間爆死する。このへんから消去法で真犯人が予測されるのだけど、まあ瑕瑾には目をつぶろう。ここまでけっこうひっぱってきてくれた映画だからね▼ヴィットリア教授が「あれを調べるべきだわ」と教会付属捜査機関(というようなもの)の班長のデスクを示し、ラングドンらがそこにあった隠しビデオを再現すると、なんとすべての経緯がそこでわかっちゃうのだ。こみいった謎ではぜんぜんなかったわけ。だからネズミ1匹だというのよね。話を変えよう。ローマと教会を救うため身を挺したカメルレンゴは反物質を帯びヘリコプターに搭乗する。そして深夜のローマ上空へ、上空へ飛行していく。彼は反物質を地上から引き離し自爆するのだ。だれだってそう思う。ところが彼はぎりぎりまで反物質をひきつけ、爆発数秒前にパラシュートで脱出するのだ。身を棄てて教会を救おうという男の物語にしては悲劇的じゃないな。ローマを消してしまう破壊物質は上空で爆発した。ヘリの上昇力でしょう、せいぜい数キロ上で爆発したのに、市民も市街も風にあおられただけとは、ちょっとおかしいのではないのか。話を変えよう▼殺し屋が変なこと言っていたよね。残りの金はいつ振り込むのだとか。金で雇われた殺し屋は消され、真犯人の手がかり発見は隠しビデオで、カトリックの救世主はランボーみたいに地上に生還。このあたりになるとイルミナティもラングドン教授も反物質も影が薄くなり、最高権力の座を狙った極悪人はだれだ、という単純な問題になってきます。ま、いいか▼大騒動は何だったのだ、という締めくくりをするのがシュトラウス大選皇枢機卿。あんまりできすぎた熱心さと過剰な思いやりは疑ったほうがいいという、健全な常識の持ち主です。彼は言います「宗教には欠点がある。それは人間に欠点があるからだ」このシーンは「天使と悪魔」の中心場面でしょう。アーミン・ミューラー・スタールは当時79歳。剛健なドイツ人らしい持ち味で、ガンとした信念の持ち主を演じ貫禄を示しました。

Pocket
LINEで送る