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シネマ365日

2012年7月16日

3人のエンジェル (1995年 ハートフルコメディ映画)

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監督 ビーバン・キドロン
出演 パトリック・スウェイジ/ウェズリー・スナイプス/ジョン・レグイザモ

あなたはエンジェルよ

 「ブリジッド・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12カ月」「迷子の大人たち」などハート・ウォーミング・ドラマを得意とするビーバン・キドロンが3人のドラッグ・クイーン(女装のゲイ)を主人公に、またまたハートフルな映画を撮った▼ニューヨークのドラッグ・クイーンコンテストに出場するヴィーダ(パトリック・スウェイジ)とノグマージ(ウェズリー・スナイプス)が自分の部屋で念入りにメイクしている。鏡に向かい眉を描く、まつげをカールしてカラーリングする、厚い肉感的な唇にゆっくり紅を引く、みつめる視線はナルシシズムに満ち、メイクが進むにつれ妖しさと高揚がその表情に広がる。キドロン監督は眉やまつげ、唇をドアップにしながら、女がメイクするときの恍惚感をスクリーンいっぱいに漂わせる。女性監督の感性だ▼地区予選でみごとクイーンに輝いたヴィーダとノグマージは、ハリウッドで開催される全国大会の出場権を得て、ポンコツのキャデラックでアメリカ大陸を横断ロスに向かう。優勝を逃して泣いていた半人前のチチを一人前のゲイにするべく、2人分の航空券を換金してポンコツを買い同乗させたのだ▼車の中でノグマージがドラッグクイーンになるための関門が4つあると教える。1「心構え」2「苦難をぶっとばせ」3「耐え忍ぶ愛を学べ」4「大きな夢を大胆につかめ」だ。チチは「立派なクイーンになる」と高らかに宣言して第1関門を突破、ホテルを前に「このへん保守的だからわたしたちを追い出すかも」懸念する先輩二人に代わり、チチは臆することなく交渉、宿泊を決め第2関門「苦難を」吹っ飛ばす▼西へ向かう3人はヴィーダの生家に立ち寄る。古式ゆかしき豪壮な邸宅だったが、遠くから息子の姿を認めた母親はそそくさと屋内に姿を消す。彼は家を追い出された名家のはみだし者だったのだ。ヴィーダは真夜中パトロールに尋問され、職権を乱用して暴行に及ぼうとした保安官をノックアウト、死んだと思い逃走する途中ポンコツがエンコ。チチが車をとめ、運転していた親切な青年が住む田舎町、スナイダービルにたどりつく▼部品の到着に3日かかる。彼らは町に逗留する。古い因襲の町だ。妻を殴る夫、生きる希望を失った失語症の高齢女性、うらさびれたレストランの経営者、陰気な主婦たち、弱いものいじめでうさを晴らす若者らは3人の闖入者を遠巻きにしてヒソヒソ。そんなことにビビっていてオカマは張っておれない、とリーダー格のヴィーダはひとはだ脱ぐ。オカマ街道まっしぐらの熱血漢である。ノグマージは「おせっかいはよせ」というがヴィーダはドメスティック・バイオレンスの夫に話をつけようとする。妻は真っ青「あなたが殺されるわ」ヴィーダは夫に「奥さんを殴らないで」「ふん、お前も殴られたいか」言い終わらぬうちにヴィーダの右ストレート1発、夫は家の外まで吹っ飛ぶ▼ノグマージはリチャード・ウィドマークの写真を落とした失語症のお婆ちゃんのあとを追いかけ、ベンチに座って話しかける。ノグマージも映画が好きなのだ。独り言で映画の話をしていると、いつのまにかお婆ちゃんが「ちがうよ」とか「そうだわ」とか乗ってきているではないか。ワオー。でもよそ者をバカにする若者たちは、3人を痛めつけようと取り囲む。ノグマージがその巨躯でずかずかと彼らの真ん中に進み、マニキュアの入った長い爪をみせびらかすといきなり不良リーダーのタマをつかみ「…」悶える青年を女たちの前に引きずっていく「レディには挨拶するものよ。さあ」抵抗しようとすると爪にムギュッと力を込め、「いいこと? まともな男ならきちんと挨拶できるものなの。その汗臭いシャツも着替えなさい。身奇麗にしないといい男になれないわよ」▼町にたった一軒の美容院を開放しヴィーダは美顔術を講習、ノグマージはさびれたブティックに積んであったカラフルな古着で女たちをイメチェン、レストランは明るいテーブルクロスで雰囲気を一新した。女たちはきれいになり、はつらつと町を歩くようになった。チチが男であることを知らずに恋した青年をあきらめさせるようヴィーダは「男であることを隠した恋はオカマ道違反よ。歩く性犯罪よ」「体の線が崩れかけた化石ババアの嫉妬よ」さんざんののしりあうが、結局は青年を愛する娘に譲る。「気にしないで、わたしを輝かせている満艦飾のネオンがひとつ消えただけよ」こうしてチチは第3の関門「耐え忍ぶ愛」に合格▼そのころ憎むべき3人を逮捕しようと憎悪に燃える保安官が居場所をつきとめた。町は年1回の「いちご祭り」の真最中「汚らしいオカマを匿ったやつは逮捕だ、やつらは人類の敵だ」ライフルをかまえてわめきちらす保安官の前に真っ赤なドレスの女が単身近づいていく…ここからのクライマックスが泣かせる。町の男も女も一丸となって3人を守る。監督は笑わせながら、ホロリとさせながら、でもきっちりと女装の男たちの尊厳を主張するのだ。その視線は公平で温かい。ヴィーダに救われた妻は町を去る彼にいう「愛しているわ、ヴィーダ」「そんなこと言われたの、初めてよ」「あなたは男でもない、女でもない、あなたはエンジェルよ」▼第4の関門? チチの独立宣言はこうです「わたしも自分に誇りをもつわ。本当の愛をみつけて一生を捧げるわ。わたしを疫病神だといったやつを見返してやる。ベタ塗りの化粧をやめて素肌美人になるわ」そして「大きな夢を大胆に」つかみ、みごとクイーンの栄冠に輝くのです。めでたし。

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