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シネマ365日

2012年7月17日

家 (1976年 ホラー映画)

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監督 ダン・カーティス
出演 カレン・ブラック/オリバー・リード/ベティ・デイビス

恐怖と混乱の世界

 マリアン(カレン・ブラック)と夫ベン(オリバー・リード)とベンの叔母エリザベス(ベティ・デイビス)と12歳の息子デイビッドが、夏だけ借りた別荘にやってくる。マリアンが気にいり、広くて由緒ありそうな邸宅で、家族そろって一夏すごせるなんて素敵とすっかり乗り気だが、ベンは家賃が安いのはなにかいわくがあるのだと薄気味悪がる。しかしマリアンに押し切られ契約したものの奇妙な付帯条件があった▼別荘の大家にあたるのは年配の兄妹なのだが、かれらの母親アラダイスがこの家から移るのはいやだと、最上階の部屋に住み着いている。ベン一家が滞在するあいだ、母親に三度の食事だけ運んでくれないだろうか、部屋の前に置いておくだけでよい。それを聞いてベンはますます気色悪くなる。でもそんなことくらい、おやすい御用だとマリアンは気軽に引受け、お母さんのことはわたしが責任をもつから任せてくれとまで断言し、いよいよ一家は車に当面の荷物を積んで引っ越してきた▼しかし家に大家兄妹はおらず、老母の世話をよろしくとメモが貼ってあった。一家は荷物をほどきベンと息子はプールを掃除して水を張ることに、マリアンは最上階にご挨拶に、部屋の前には食事の済んだトレーがだしてあった。ノックをするが返事はない。マリアンはドア越しに自己紹介した。アラダイスの隣の部屋を掃除していたマリアンは老若男女何人もの人物を写したセピア色の写真と、さまざまな角度から撮った家の写真をみる。その傍らにあった古いオルゴールをあけた彼女はメロディにききほれた。プールでは親父と息子がプールの中ではしゃいでいる。エリザベス伯母は油絵を描きながら、二人の様子をほほえましげに眺めていたが顔色が変わる。ベンが執拗に息子の頭を水に突っ込み、はじめはおもしろがっていた息子は父親の血走った目と暴力的な振る舞いに恐怖を覚え、助けてくれと叫んでいるのだ▼マリアンは約束通り、食事を作って老母の部屋の前に置くがひとつも食べていない。一週間目にしてやっと食事に手をつけた形跡がありマリアンはほっとする。しかしエリザベスは体調を崩し、日をおうごとにますます悪化、胸をかきむしりうわ言をいい、脂汗を流して目を見開く。ベンは医師を呼ぼうとする。しかし彼には幼少期の事故にともなう幻影がついてまわり、やせた背の高いサングラスをかけた黒服の運転手が運転する車がベンの意識を奪う。エリザベスは衰弱して死ぬ。温室には狂ったような毒々しい色の花が咲き乱れ、異常を感じたベンは家をでようとするが、マリアンは承知しない。とうとうベンは妻をおいたまま息子を車にのせ家を出るが嵐に襲われ、行く手を倒木が遮った▼家がつぎつぎ家人をたぶらかし、家族を殺しあいさせるという設定なのだ。その怨霊が人間の形をとっているのがたぶん老母なのだろう。マリアンは老母にとりつかれ、ベンを窓から突き落とす。ベンが墜落してきた車に押しつぶされ息子も死ぬ。部屋の写真立てにはいつしかベン一家の写真が増えていた。これらの写真は犠牲者のアルバムだったのだ▼よくわからん映画である。ひとつ・いつマリアンは老母に魂を奪われたのか。マリアンをひきずりこんだ安心感で老母は食欲がでたのか。ひとつ・不動産屋の兄妹は怨霊の親戚か、家に生贄をみつける犠牲者斡旋業か。とすればはじめから彼らは人間ではないのか。ひとつ・魂を奪われたマリアンが、殺すはずだった息子を助けたのは、怨霊より母性が強かったが、結局は怨霊に100%心身を乗っ取られたということか。ひとつ・ベンの妄想に現れるサングラスの運転手の過去のいきさつが不明だ▼こういう矛盾をはらみながら、最後まではらはらどきどきさせてくれる。それにしても怨霊と唯一太刀打ちできる毒気の持ち主といえばベティ・デイビスだが、あっさり最初の犠牲者になって退場する。一家全員が怨霊の餌食になったあと、屋敷の家主は戻ってきて再び犠牲者を探す。こうして写真はふえるいっぽう。荒唐無稽とは、いいかえればなにも「しばり」のない世界で成り立つ物語だということだ。こんなまわりくどい言い方をして駄作だと断定しないのは、どこか愛すべき映画なのだろう。ラストのカレン・ブラックの悪の形相は、脅威にみちた混乱の世界そのものだったわ。

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