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シネマ365日

2012年7月22日

ゼロ時間の謎 (2007年 ミステリー映画)

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監督 パスカル・トマ
出演 メルヴィル・プポー/ダニエル・ダリュー/キアラ・マストロヤンニ/ローラ・スメット

謎解きだけなんか面白くない

 アガサ・クリスティ原作「ゼロ時間へ」の映画化。ゼロ時間というミステリアスなタイトルの解釈が、冒頭にある。殺人とはプロセスの結果である。偶然や必然がからみあい、沸点を迎えて事件が起こる。ある日、ある時刻、ある場所でおこる沸点をゼロ時間と称する。わかったような、わからないような説明だが、なんとなく読者をその気にさせるうまい雰囲気作りだ▼風景がきれいだ。深い群青色の、これはフランス、ブルゴーニュ地方らしい。青い海、打ち寄せる波、澄み切った空の下にみえてくる格式ある豪邸、ここで「ゼロ時間」が起こるわけね。ゼロ時間とはすなわち「殺人の起こる、もしくは起こった時間」のことだ。それを承知して、さてつぎにいこう。この豪邸に謎解きの主要人物が集まる。好青年のテニス・プレーヤー、ギョーム(メルヴィル・プポー)は豪邸の女主人カミーラ(ダニエル・ダリュー)の甥。新婚の妻カロリーヌ(ローラ・スメット)とともに屋敷にやってくる。同時に彼は別れた妻オード(キアラ・マストロヤンニ)も招待している。常識では考えられない、というか、まともに考えればばかばかしい状況を平気で設定する、という前提がすでに謎解きの前段階である。まあいい、あんまりこだわらず先に進もう▼ギョームの友達でオードを愛する青年や、高名な判事や、女主人の介護人やらが晩餐会に集まる。そこで判事が過去に、殺人を犯しながら罪を免れた少年の事例をあげ、彼は成長し青年となりいまも社会生活を送っているが、殺人者の素質はいつか鎌首をもたげるにちがいないと、不吉な予言をする。するとどうだ、翌日彼は死体となって発見されたのだ。その青年には肉体上の特徴があったという彼の言葉がよみがえる。ギョームは妻と前妻にはさまれ辟易するが自分の撒いたタネである。現妻はわがままで行儀が悪く、格式ある豪邸にぜんぜんふさわしくない。でも伯母さんは昔人間だから甥のどっちつかずの煮え切らない態度を許せない。けじめとして、オードに帰ってもらいなさいと厳しくいう▼すると翌日またもやこの伯母さんが撲殺死体で発見されるのだ。こうなると犯人はギョーム以外に考えられない。しかも彼は伯母さんの遺産相続人だから、伯母さんが死ぬと莫大な財産が入るが、殺人犯となると話は別だ。それはさておき、ギョームはオードに言い寄り、やっぱりキミのほうが好きだ、妻と別れるからもう一度結婚しようと調子のいいことをいう。キミの狙いはいったい何なのだといいたくなる▼休暇で海辺にきていたバタイユ警視が、刑事である甥のレカに要請され捜査に協力することになる。あまりたくさんはないがバタイユ・レカもクリスティものには欠かせないコンビだ。しかし残念なことにポアロやミス・マープルほどにはクリスティ自身の愛着がないみたいで、決めセリフもないし、容貌の特徴もこれといってつくっていない。脳細胞の色まではともかく、やっぱり彼らにも「クリスティ・ブランド」の「しるし」はつけてあげるべきだよね。フツーのおじさんが途中から出てきた、という印象のうえに出番そのものが少ないの。殺人と恋愛、遺産相続と過去の怨念、地元で生じた自殺未遂事件、判事はなにをいおうとしていたのか▼ダニエル・ダリューはこのとき90歳。いくら車椅子の役柄とはいえ、お元気ですねー。生きるフランス映画ですね。しかしなんといってもアタマひとつ図抜けて目立つのがキアラ。その名の通りマルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーブの娘で今年40歳。父親そっくりだけど、やっぱり母親にも似ていますが、母親ほど女優業が好きではないみたいですね。こんなどうでもいい役をやっていたのでは、彼女が受け継いだありあまる財産(お金ではないです)が泣く。本人に欲さえあれば、もっといい映画にいくらでも出られるのに。と思ってみれば、ローラ・スメットはフランスの国民的ロックン・ローラー、ジョニー・アリディの娘ではないですか。なんだ、この映画は親の七光り同窓会か。謎解きの限界といってしまえばそれまでだが、もう少し現実の過酷さや体温のある喜怒哀楽がほしい。それこそクリスティの意図する沸点だったと思うが。

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