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シネマ365日

2012年7月23日

復讐捜査線 (2010年 復讐劇映画)

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監督 マーティン・キャンベル
出演 メル・ギブソン/レイ・ウィンストン

はかなさを引きずるメル・ギブソン 

 最愛の一人娘を殺された父親の復讐劇。初老の刑事トーマス・クレイブンを映画出演8年ぶりのメル・ギブソンが演じる。メルは1956年生まれの56歳だ。同い年、もしくは1歳年上・年下の俳優男女を思いつくままあげてみる。57歳ではケビン・コスナー、ブルース・ウィルス、ジェフ・ダニエルス。女優はマーゴ・ヘミングウェイ、ウーピー・ゴールドバーグ。56歳ではアンディ・ガルシャ、ミッキー・ローク、トム・ハンクス。女優はリンダ・ハミルトン、ジーナ・デイビス。55歳ではダニエル・デイ・ルイス、女優はメラニー・グリフィス。ちょっと年は離れるがリチャード・ギア61歳、アル・パチーノ71歳、ロバート・デ・ニーロ67歳▼このごろあんまりでていない、もしくは引退宣言した俳優さんもいます。そのなかでメルギブはどうでしょう。ここ数年映画以外の話題で盛り上がりました。アルコール依存症の彼が飲酒運転、取り締まったユダヤ系警察官への差別発言、長年連れ添い7人の子をもうけた夫人との離婚と、新しい女性との破局、親権と慰謝料をめぐる泥沼の争い。ギブソンに対する映画界の拒否反応は根強く、8年間の空白を経ての映画出演が「復讐捜査線」です。メルギブファンは、いい年をして、いつまでハリウッドの問題児をやっているのだといいたいでしょうね。前述した俳優のみなさんが数人を除き、出演したとしてもあんまりパッとしないのに比べ、出てきた以上は(だいぶくたびれたとはいえ)やっぱり目立つなあと思わせる俳優なのに。今後おおいに「しっかりやれよっ」とだれかカツをいれてやれ▼ボストン警察のベテラン刑事トム(メル・ギブソン)は休暇を取って帰省する娘エマを空港に迎えに来た。マサチューセッツ工科大学を卒業し一流企業に勤める優秀な子だ。トムは(多分離婚したのだろう)たった一人の娘が可愛くて仕方ない。自分の命であり宝である。空港に着いたときエマは嘔吐を催す。妊娠じゃないわと車の中でエマは笑顔でいうが、その表情に屈託のあることが父親にはわかる「何でもいうのだよ。相談相手としてはパパの経験はかなりのものだよ」と促す▼家に着いた。またエマは激しく嘔吐し医者に連れていってくれと頼む。娘をだきかかえて玄関をでたとたん、覆面の男2人が彼女を狙撃。父親の腕の中で息絶える。アクションものに強いマーティン・キャンベルらしい衝撃的なプロローグだ。映画はここから急展開…するかと思うが、いや、まだまだタメがあるのだ。エマが子供の頃の幻がトムの脳裏に浮かぶ。「パパ、大丈夫?」と気遣うエマの幻に「大丈夫だよ」と声にだしていう。エマの所持品のひとつひとつを確かめる。拳銃があり、放射線測定値がある。勤務していた会社はノースモア社。軍需企業である。エマの同僚に仕事の内容を聞いても「守秘義務がある」の一点張りで聞き出せない▼そこへダリウス(レイ・ウィンストン)と名乗る巨漢が現れた。企業の掃除屋、つまり隠蔽工作員。ノースモア社にとって都合の悪いことはすべて隠蔽する。ところがこの男がなぜかトムの孤高の闘いに共鳴を感じる。保身・利益・裏切り・暗殺、そんなことをしてやれ国のためだ、国益のためだとエラソーなことをいっている政治家や大会社の薄汚い連中なんかより、定年前の、さして出世もしなかったトムのほうがよっぽど男らしく潔い。自分に残された余命いくばくもなし、と医師から告げられたダリウスは腹を決める▼男の映画なのです。娘への濃い情愛も、男のやさしさをひきたてるためのものである。この映画にはラブシーンがありません。メルギブの裸もシャツを着替えるときにチラッと背中がみえるだけで、それをみると「リーサル・ウェポン」当時の小柄ながら(ギブソンの身長は175センチ)筋肉におおわれた背中やお尻や胸とはちがいます。厳しい節制で(アルコール依存症は克服したのか)お腹こそ出ていませんがタルミは隠しようがありません。いや、そんなことはどうでもいい。ひとつ、またひとつと残された所持品のみを手がかりに、父親の執念は真相に近づいていく。何度かの襲撃にさらされながらトムは事件の中核にたどりつく。しかし同時にエマと同じ方法でトムの生命の危機は迫っていた。ダリウスはどうでるのか。矢尽き刀折れた主人公が執念の火群(ほむら)となって幽鬼のごとく犯人に迫る。はかなさをひきずる影のような演技に、若い時にはなかった幾星霜(ちょっとおおげさか)の重さがにじみました。

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