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シネマ365日

2012年7月26日

ワールド・オブ・ライズ (2008年 アクション映画)

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監督 リドリー・スコット
出演 レオナルド・ディカプリオ/ラッセル・クロウ/マーク・ストロング

砂漠の国を選ぶ青年

 舞台は中東。ロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)はCIAのすご腕工作員。上司であるエド・ホフマン(ラッセル・クロウ)からの指示で潜入調査を行い報告する。今回の目的は自爆テロ組織のリーダーを捉えることだ。助手のバッサムとともにイランに潜入したフェリスは情報提供者とあい最新情報を得るが、銃撃戦にまきこまれバッサムは殺され自分も瀕死の状態に会う。ワシントンの広い機能的な、エアコン完備のオフィスで仕事するホフマンからは、冷酷なつぎの司令が届く▼映画が始まってまもなく、ド迫力の爆破シーンが出る(CGらしいけど)。筋書きもけっこう混みいっているし、登場人物のからみあいも複雑、主演2人が正反対の性格であるところがちょっと図式的だとしても、爆破にテロ、拷問に裏切りなど、展開がスピーディーであきさせない。どこからともなくジワっと染みいってくるのはたとえようもない、アメリカに対する憎悪だ。イラン・イラク戦争を日本人が実感として受け止めるのはかなり難しい。第二次太平洋戦争の、たとえば原爆の悲劇がそうであるように、血を流した国でないとわからないものがあるのだ。そこをリドリー・スコットは理屈ではなく、説明でもなく、破壊と暴力の映像で圧倒してしまおうとする。この力技が「ワールド・オブ・ライズ」のすみずみまで駆使されている▼フェリスはとっくにこの仕事に嫌気がさしている。自分は無駄なことをしている、ホフマンを含めアメリカから一方的にだされる命令は、現地で命のやりとりをしている工作員とその協力者にとって、胸クソが悪くなるほど無意味だ。中東にきていっしょに仕事をした苦楽をともにするバッサムたちとのほうが、心を通わせることができた。バッサムは自分が捕らえられたときは殺してくれたらよいとフェリスに命を預けていた。彼らの国にでしゃばるアメリカが観念と武器弾薬でもって介入したところでなんの解決にもならない。ディカプリオが感受性の繊細なCIA工作員を、クロウはブクブクに太り(体重を20キロ増やせという監督の指示による)まちがった指示で現場の工作員を危機においやる上司を、ディカプリオはナイーブに、クロウはいるだけでも不快になる男、でもストレスで眠られず早朝に仕事をする陰気な男を力演している▼フェリスはヨルダン情報局の責任者ハニ(マーク・ストロング)に協力を仰ぐが、ハニは自分と仕事をするなら「うそをつくな」と念を押す。イヌに咬まれた傷がもとで、手当してくれた看護師のサリームをフェリスは愛するようになる。テロ組織にサリームが誘拐されても、ホフマンはなにもできず見殺し同様、単身追跡したフェリスは捕らえられ拷問で死にかける。それを救ったのはハニだ。男たちの心理戦のかけひきやバランスの妙が的確だが、いちばんのもうけ役はハニだろう。ハイテクのアメリカの対極にあるアナログのイラク。作戦が難航するのはハイテクのアメリカのほうだ。ハイテクには「うそをつくな」というアナログの約束事なんか意味がないのかもしれないが、イラクの取引では忘れてはならないことだとハニは厳しく通達する▼フェリスは爆破と銃撃と死体と、物事を考えるのは殺してからという砂漠の国で、うそをつかない仕事のやりかたで生きていくことを選ぶ。その報告は自分に対する批判でもあるのに「あ、そう」とばかり表情をうごかさず「フェリスの衛星の監視を解け、彼はもう一般人だ」と指示して黙って寿司を喰う、感情のないホフマンが妙に印象的だ。クロウとリドリー・スコットはウマがあうらしくアカデミー作品賞の「グラディエーター」のほか「ロビン・フッド」「アメリカン・ギャングスター」でいっしょに仕事をしている。演技過剰気味のラッセル・クロウは、リドリー・スコットの大型映画ではうまくツボにはまるのだろう。

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