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シネマ365日

2012年7月31日

大 脱 走 (1963年 事実に基づく戦争映画)

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監督 ジョン・スタージェス
出演 文中に含む

「男たち」の快作

 みごとに女優がひとりもでない男の映画。それもそのはず監督がジョン・スタージェスだ。古くは「OK牧場の決斗」「老人と海」「荒野の七人」「鷲は舞いおりた」など、男の闘いあり、友情あり、忍耐あり団結あり孤独あり、男の純情あり反骨あり。本作はそれらすべてを統合した「スタージェス・男の決定版」だな。ジョン・フランケンハイマーなんかもかなり男っぽい監督だけど「大列車作戦」なんか、そんな必要あると思えないのにチョコッとジャンヌ・モローを出したりして色目を使っている。ところが「大脱走」ときたらもう、女にそのへんうろうろされたら「ぶちこわしじゃわ。あっち行け」という監督のどなり声がきこえそう。それくらい男ばっかりの風通しがいい快作なのです▼それと関連するけど、本作の成功は「大脱走」つまり「集団脱走」に的を絞ったことですね。捕虜となった軍人の任務に「脱走して敵に捜索させることにより、攻撃の戦力を分散させ後方を撹乱する」という目的があった。ここはドイツの北部、第三捕虜収容所にはそういう脱走のベテランばかりが収容されている。どうせアブナイ連中なら一箇所に集めて管理しようというのだ▼送られてきたのは各地で脱走を指揮したバートレット(リチャード・アッテンボロー)、地獄耳の情報屋マグドナルド(ゴードン・ジャクソン)、トンネル王ウィリー(ジョン・レイトン)とダニー(チャールズ・ブロンソン)、2人は親友だ。身分証の偽造など精密作業で視力をなくすコリンにドナルド・プレザンス。脱走に必要な道具すべてを調達する調達屋ヘンドリーにジェームズ・ガーナー。脱走したときの平服、コート、ドイツ軍の軍服を仕立てる通称・仕立屋にロバート・デズモンド。トンネル工事の雑音を消すためいつも合唱隊を指揮し、大声で歌わせている測量屋カベンティッシュにナイジェル・ストック。合図ひとつでトンネルなどの工事を中止・偽装するシステム構築はソレン(ウィリアム・ラッセル)、脱走歴17回の独房王ヒルツにスティーブ・マックイーン▼なにが「大脱走」という映画を光らせているのか。ふつう考えれば脱走などせず、終戦まで待てば少なくとも命の保証はあるわけだ。彼らはみな捕虜とはいえ、イギリス軍・アメリカ軍将校で、将校なりの扱いを受けている。それなのになにかやらねば、なにかに立ち向かわねば気のすまない男たち、というところがじつによく描けているのだ。だれひとり「こんなバカなことはやらない」なんていわない。単独行動しかとらなかったヒルツも、独房仲間の死をきっかけに大脱走計画に参加する。われ先に先頭に立って穴を掘る、土をかきだす、かきだした山のような土をどうする。ドイツ軍士官に絶対わからない土の捨て方を案出する(ズボンの下に袋をさげ、手をポケットにいれてヒモをひっぱると、袋の口がほどけ土が自動的に地面に落ちる、歩きながら落ちた土をならす、これには笑った)、偽造書類の見本を調達するため、監視員をコーヒーとチョコレートで篭絡する。じジャガイモから焼酎をつくり、独立記念日に星条旗(と判別できる旗)をあげ収容所内をパレードする。楽しくてたまらぬ、というそんな男たちの幼児性が、明るくさわやかなのだ▼捕虜250人を脱走させるという前代未聞の計画はしかし、明るくさわやかなだけの大脱走ではなかった。スタージェス監督は前半の「いけ行けドンドン」から打って変わったシリアスなトーンで後半を統一し、男たちの情熱のゆくすえと着地点を見届ける。実際に脱走した捕虜70人のうち50人はゲシュタポにより銃殺、無事国境を超えたのは自転車で逃げたセジウィック(ジェームス・コバーン)と、ボートで川をくだったウィリーとダニー。失明したコリンを最後までかばって逃げたヘンドリーはアルプスを超えたばかりのところでドイツ軍にみつかりコリンは銃殺。バイクを駆った脱出行でドイツ軍をふりまわしたスティーブ・マックイーンは、再び捕虜となって独房入り。壁に向かってひとり、いつものボール投げをしている…。その音がむなしく響くか哀悼に響くか、はたまた希望をつなぐ音に響くか、スタージェス監督は観客に任せる。

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