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特集「ディーバ(大女優)」

2012年8月6日

特集 ディーバ(大女優)3 マレーネ・ディートリッヒ 情婦 (1957年 法廷ミステリー映画)

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監督 ビリー・ワイルダー
出演 マレーネ・ディートリッヒ/タイロン・パワー/チャールズ・ロートン/エルザ・ランチェスター

「たいした女だ」 

 映画「どんでん返しベスト10」を選ぶとしたら…思いつくまま10本あげると「サイコ」(監督アルフレッド・ヒッチコック)「アザーズ」(アレハンドロ・アメナーバル)「ユージュアル・サスペクツ」(クウェンティ・タランティーノ)「シックス・センス」(ナイト・シャラマン)「マルホランド・ドライブ」(デヴィッド・リンチ)「クラッシュ」(デビッド・クローネンバーグ)「スティング」(ジョージ・ロイ・ヒル)「エンゼル・ハート」に初代「猿の惑星」(フランクリン・J・シャフナー)でもトップはこれ「情婦」だね▼原作がアガサ・クリスティの名作「検察側の証人」で舞台化もされたし、ほとんどの観客は筋書きを知っていると思うのよね。それを見るというのは原作のよさに加えて映画独特の監督・脚本・キャスティング・撮影などの、総合からくり世界を堪能したいからでしょう。出演者をみたらなるほどと思うわ。病院から退院したばかり、酒と葉巻に目がなく看護師をてこずらせる老弁護士ウィルフリッドにチャールズ・ロートン。口うるさくて差し出がましいが使命感に燃える看護師ミス・ブリムソルにエルザ・ランチェスター。彼らは実生活では夫婦だ。「情婦」の好演で夫婦そろってオスカーにノミネートされた。主人公レナードにこれが遺作となったタイロン・パワー。彼の妻クリスティーネにマレーネ・ディートリッヒ。監督はビリー・ワイルダー▼純然たる法廷劇だが最初はもたついている。老弁護士と看護師のしつこい掛け合いや、レナードが金持ちの未亡人とお近づきになるいきさつや(劇中シーンの、映画上映中にもかかわらず長話をさせる無神経な演出にはうんざりする)、タイロン・パワーの大根ぶりも相当なものだ。画面が引き締まるのはディートリッヒが出てきてからだ。ニコリともしない例の冷たい眼差しと低いしゃがれ声で現れる。無表情なまま弁護士とやりとりをする。ドクター・ストップにより刑事事件は扱わないと言っていた老弁護士が本件を引き受けるのは、クリスティーネと対面してからである▼マリア・ライヴァの書いた「ディートリッヒ」によれば「情婦」は「母がはじめて積極的に出演を希望した唯一の作品」らしい。隠れた傑作といわれる「異国の出来事」以来、ビリー・ワイルダーとは10年ぶりの仕事だったが、ディートリッヒの毒舌は相変わらずだった。いわく「ロートンは狡い狐だ。蜂に刺されたような唇をしている。彼に惚れ込んでいるビリーは彼のすることに口をださない」「私のいつもの美しさなど、だれの頭にも思い浮かばないような過酷な撮られ方をしている一方で、およそこの役には不向きなハリウッドの男優(タイロン・パワー)が、きれいにマニキュアして、指輪とカフスと腕時計をはめた手を被告席の縁にのせている。イギリスの貧しい男という役柄がわかっているのだろうか」この調子で当たるを幸いなぎ倒している▼ディートリッヒは56歳だった。功なり名遂げた、といってよいだろう。まわりがどんなに騒然としていても、無人島に独りいるような沈潜とした雰囲気をつねにかもしていた。このとき彼女は自分の情事に没頭していた。相手はユル・ブリンナーである。ひんぱんに日記に「ユル」が登場し、「追想」で共演したイングリッド・バーグマンに火の粉はふりそそいだ。ディートリッヒはふたりの間に関係があるにちがいないと決め、ブリンナーから電話がないのはスエーデン生まれのジャジャ馬(バーグマン)のせいであり、国際的に知られたアバズレとこきおろし、バーグマンに結びつくことなら何でも、嫉妬と怒りで途方もない話を捏造するようになる▼「情婦」に話をもどそう。どんでん返しは二転三転する。ディートリッヒのしゃべるセリフは少ないが、決定的なことをビシャッといわせてワイルダーは畳み込んでいく。クリスティーネの健気な奮戦の甲斐もなく、レナードとはどうしようもない男のクズだとわかる。献身に対するあまりの顛末にクリスティーネはあえぎ、不実な男に自ら決着をつける。警官に引かれていくクリスティーネの背中に老弁護士は「たいした女だ」とつぶやく。事件の解決をみたらバミューダに静養に行くはずが「そんなことしておれるか。クリスティーネの弁護をするのだ」と意気も軒高に叫んでエンドだ。ディートリッヒ1950年代の代表作。

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