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特集「どんでん返し」

2012年8月17日

特集「どんでん返し」 ライアー (1997年 クライム・サスペンス映画)

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監督 ジョナス・ペイト
出演 ティム・ロス/クリス・ペン/マイケル・ベーガー/レネ・ゼルヴィガー

真犯人は「嘘つき」 

 出演者はみなうまい、できも悪くない、緊迫感も充分で観客の引きずり回し方もドウに入っている。それなのにどこが…となると、ちょっと切れ味が弱いのよね。真犯人が明らかにされない、観客の解釈に任されるというのは、カタルシスとして中途半端なのだ。たしかに「アッ」という仕掛けはあるのですよ。ラストのワンシーンをみて「エエッ。どういうこと。つまり」こういうことか、ああいうことかとわたしたちは考える。でもこういう混乱って映画の文法としては余計なことだと思うのよね。本作はよく「ユージュアル・サスペクツ」と引き合いにだされるのですが、残念だけど、どんでん返しの鮮やかさが全然ちがうと思うのよね▼ではつぎはこの映画に感心したところです。ティム・ロス。「海の上のピアニスト」といい、本作のIQ151の主人公といい「思いつめる人」をやらせたらとびきりですね。ハンサムでも筋肉マンでも、ましてアクションでみせるわけでもないのに、異様な光を発する目つきだけで芝居ができる稀有な役者さんです。クリス・ペンはショーン・ペンの弟。ティム・ロスと「レザボア・ドックス」(1991)で共演しました。破滅一直線大好き人間=クウェンティン・テタランティーノの映画で注目されたのです。覚えておられません? 宝石強盗を計画したロスの犯罪王の息子、ナイスガイ・エディを演じた青年が若き日のクリス。ついでにいえばコードネーム、ミスター・オレンジがティム・ロスでした。6年後二人は再び本作で。クリスは見違えるほど太りました。2006年1月40歳の若さで世を去ります。死因は心臓肥大と薬物使用と言われました。劇中ティム・ロスが、クリスが演じるブラクストンを「天才的だ」というシーンがありますが、このセリフは全編の仕掛けをほのめかす大事な一言です▼レネ・ゼルヴィガーが娼婦に扮している。ハリウッドではいざしらず、ヨーロッパ映画では娼婦がやれたら一人前という不文律があり、娼婦役をこなすのは女優の通過儀礼とされてきました。だから名だたる大女優がこれに挑戦しています。マレーネ・ディートリッヒ、シモーヌ・シニョレ、ジャンヌ・モロー、カトリーヌ・ドヌーブ。本作でもやる気満々のゼルヴィガーでした。マイケル・ルーカーも名前は忘れても「あ。この人…」スクリーンでの記憶にとどまる、得な顔をした俳優さんですね▼粗筋です。ウェイランド(ティム・ロス)は金持ちの息子。プリンストン大学で心理学を専攻し首席で卒業。でも無職。それにはわけがある。エリザベス(レネ・ゼルヴィガー)という娼婦が胴体を切断した惨殺死体で発見され、ウィランドの電話番号を書いたメモを持っていた。ウェイランドは容疑者として嘘発見器で尋問を受ける。捜査官がブラクストン(クリス・ペン)とケネソウ(マイケル・ルーカー)だ。ウェイランドは巧みな話術で捜査官二人の弱みをつき、主客逆転。彼らの私生活が暴かれ三人三様のウソが発覚していく。いちばんの嘘つきはだれだ。それこそ真犯人だ。本筋にからむ伏線の張り方も上手です。ウェイランドの病気の発作、裏社会を仕切る女・ムックに脅かされるブラクストン、不意に現れてブラクストンに謎めいた言葉を残す黒人男、ケネソウは嫉妬深いバイオレンス男で、浮気する女房にもエリザベスにも暴力をふるっていた▼ウェイランドは女の遺体を切断したとは認めるが殺していないと主張、ケネソウは、これまた暴力は振るったが殺人はしていない、嘘発見器はなんの効力も発揮しないまま、最期は殴り合いになりウェイランドは発作を起こし死ぬ。でもその前に彼はこっそりムックにもらった昏睡に陥るクスリを飲んでいるのです。鑑識の車が来て、遺体を収容した係員はブラクストンに謎の耳打ちをした、あの黒人男だ。どうなっているのだ。だんだんヤヤコシクなってきたところへ場面は一年後に転換。夜のベンチに一人客をまつ女に「やあ」声をかけたのは、ウェイランドではないか。白々しいティム・ロスの登場でエンドです。だからね、もっとハッキリ真犯人はウェイランドだ、彼が女を殺し切断し、金に困っているブラクストンを抱き込んでクスリで死んだふりをし、ブラクストンの手下が遺体として収容し処置した、奴は蘇生して逮捕を免れ、1年後再び異常な犯罪に手をそめようとしているのだとー自分のアタマの悪いことを棚にあげ、文句をつけるのはナンだけどーもうちょっとわかりやすく描いてくれよな。そしたらスッとしたのだけどな。

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