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特集「どんでん返し」

2012年8月19日

特集「どんでん返し」 マジック (1978年 ホラー・サスペンス映画)

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監督 リチャード・アッテンボロー
出演 アンソニー・ホプキンス/アン・マーグレット/バージェス・メレディス/エド・ローター

人形が生きている

 アンソニー・ホプキンスの髪がふさふさしている。「マジック」は今から33年前の映画。彼は42歳だったから、そらそうでしょうね。アッテンボロー監督はオールスター総出演の戦争映画「遠すぎた橋」とか、アパルトヘイトの「遠い夜明け」とかいう大作・話題作や社会派の作品が多かった。「ガンジー」でアカデミー監督賞を取っています。俳優としては「大脱走」で、脱走計画を仕切る英軍の将校や「ジュラシックパーク」の学者役がありました▼腕はいいのに引っ込み思案の手品師コーキー(A・ホプキンス)が、腹話術をとりいれ爆発的な人気がでた。人形の名前はファッツ。おだやかで内向的なコーキーが、ファッツを介する、となると悪意のこもった大胆なことを言う真逆の人間に変わる。ナイトクラブの客たちはファッツの口からでる挑発的で露悪的なトークに大喝采だ。やり手のマネージャー、ベン(バージェス・メレディス)はコーキーを、テレビの特別番組シリーズに売り込む。破格のギャラで出演が決まるが、健康診断書を提出するという条件があった。長期に及ぶシリーズ番組で病気降板は困るのだ▼言を左右してコーキーは診断をことわり、説得するベンを無視して逃走してしまう。彼がきたのは故郷の寂しい町。高校時代好きだったペギーがやっているコテージだった。内気なコーキーはなかなか本心を打ち明けられないが、ファッツが間にはいると話がはずみ二人の仲は急接近。ペギーの夫は不動産会社を倒産させ、あれこれ事業に手をだすがうまくいかず離婚寸前だ。コーキーとファッツの愉快な掛け合いに、ペギーの気持ちはほぐれ、久しぶりに笑顔がもどる。夫とのセックスでは得られなかった快感にペギーは高揚し二人で新しい人生を歩む気になる。ところがファッツは「おれをほっておいていい目をしているな。これ以上すてておいたら復讐してやる」ぶっそうなことをいいだす。ある日いつものようにファッツを相手におしゃべりに興じていたとき、いつのまにか居所をさぐりあてたベンが戸口にたって一部始終を見ていた。ベンはコーキーが頑強に健康診断を拒否した理由が「これか」とわかる。彼の腹話術はもはや腹話術とはいえない、ファッツに別人格がのりうつった強度の分裂症だったのだ▼やがて出張から夫のデュークが戻ってきて、ペギーとコーキーの関係に気づく。ファッツはデュークを殺せとけしかける。コーキーの無意識の殺意や願望をファッツは代弁する。ファッツによってコーキーの潜在意識が顕在化する。コーキーはデュークを、またコーキーを探しにきたベンをも殺害しペギーといっしょに町を出ようとする。トランクに入れられファッツがたちまち喋り出す。「おれは悲しいよ、いっしょに連れていってくれよ。いままでずっといっしょにいたのに」「うるさい。お前のヤキモチはたくさんだ」「置いていかないでくれよ。お前のために殺人までしたのに」コーキーはトランクからファッツをだしてやる。ファッツはとうとう「そうだ、女を殺したらすべて解決するのだ。やれ。コーキー」▼ペギーを殺せなかったコーキーは自分を刺す。ペギーがコーキーのコテージに歩きながら「決心したわ。あなたと町をでるわ、コーキー」と歓びにあふれてよびかける。そしてファッツの口調を真似てこういうのだ「こんなうまいチャンスってないぜ」エッエー。まさか、まさか、ペギーは意識の遠隔操作でデュークを殺させたのか。コーキーは殺しの道具だったのか。ファッツに乗り移っていたのはペギーの殺意だったのか。ラストのアン・マーグレットの解放感にあふれるはしゃぎようをみたら、監督の意図は明らかにどんでん返しにあったのだろう。だってカードを使った読心術にあれほどペギーは執着し、やってみてくれ、自分にやってみせてくれとコーキーに頼むでしょう。あれよ、あれ。あれできっとコーキーの心を読んで、どんでん返しを仕掛けたのだって。人形が物語の大事な伏線や、主人公を助演している映画は多い。「叫びとささやき」「ファニーとアレクサンデル」「狩人の夜」とか。でも主人公の感情移入によって命を与えられたような不気味さでは「マジック」のファッツがずばぬけている。

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