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シネマ365日

2012年8月21日

スノーホワイト (2012年 アクション・アドベンチャー映画)

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監督 ルパート・サンダース
出演 クリステン・スチュアート/シャーリーズ・セロン/クリス・ヘムズワース

圧巻の新解釈・ふたりのヒロイン 

 原作はグリム兄弟の「白雪姫」であることは周知なのですが、まあなんと、ハリウッドがふんだんにお金をかけた壮大な撮影技術はお見事というしかない。ホントに見ていて楽しいのですよ。それに原作を自由自在に転換した解釈力がいいのです。脚本のホセイン・アミニについていえば、イラン出身の人で46歳。得意ジャンルは歴史・文芸ものです。彼の脚本で映画化された名作に、ヘンリー・ジェイムスの「鳩の翼」、イギリス文学の古典「サハラに舞う羽根」(原作A・E・W・メイソンの「四枚の羽根」)、トマス・ハーディーの「日陰者のふたり」(原作は「日陰者ジュード」)があります▼ヒロインはもちろんタイトル・ロールのスノーホワイト(クリステン・スチュアート)です。彼女が陽のヒロインだとすれば陰のヒロインが継母ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)。スノーホワイトを助ける森のマッチョマン、漁師エリックにクリス・ヘムズワース。あと8人の小人とか毒リンゴとか、正統派「白雪姫」の踏襲のほか、森の怪獣や魔女である継母・女王に若さを吸い取られる美しい村の女性たち、娘を女王の生贄にされないため、顔に傷をこしらえてわざと美しさを損ね、隠れ住む女たちの集団が出てきます。小人たちはディズニーランドのあどけない小人たちではなく、彼らはもと鉱山の採掘者、地下で働き地上に上がってきたら幸福で明るい王国は魔女の支配する、ダークな世界になっていた。彼らはスノーホワイトさえ殺そうとする、粗野でみさかいのない強盗団として登場します▼しかしなんといってもみどころは、陰陽ふたりのヒロインの描き分けにあります。生まれた時から王国の後継者として、女王の座が約束されていたスノーホワイトは、父母から知らず、知らず、帝王学を身につける恵まれた環境にある。理性と教養にあふれた母・女王は翼をいためた海鳥の手当をした、というスノーホワイトにこういう「いい宝物を持っていますね。女王になったとき役に立ちますよ」。父・国王は勇敢で民のことを思いやる名君だった。だった、というのは彼が妻を病気で失ったことが王国衰退の始まりだったからだ▼国を狙う侵略軍は巧妙だった。国王は敵を討伐したのち、憐れな、しかし美しい捕虜に目をとめる。これが傾国の魔女ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)だった。彼女はスノーホワイトと逆の人生を歩んできた。祖国は討ち滅ぼされ、身は男の道具となり、弟とふたり放浪のはて魔術を身につけ、類まれな美貌で男をとりこにし、永遠の美と生命による輝きの性を生きようと希求する。その意思の強靭なこと。フツーの女にできることではございません。ラヴェンナは結婚した父王を床入りの夜あっさり刺殺し、王女を幽閉。鏡に向かって「世界でいちばんキレイなのはだれか」といつもたずねる。「あなたさまでございます、女王さま」といわれれば満足するが、魔女も年をとる、加齢による衰えは隠せない。ならばどうする。エステか、エアロビクスか? 冗談でしょ。女王は美しい処女の生気を吸い取るのである▼そのうちスノーホワイトが美しい娘に成長した。でもなー。子供のころは可愛かったのだけどね、ダークな牢獄で思春期を送ってきたせいか、クリステン・スチュアートはいつも眉間にしわをよせ歯が痛くて仕方ない、というような表情で登場するのですよ。鏡が正直だったらためらわず「いちばん美しいのはやっぱり女王、あなたです」っていうに決まっているわよ。うそだと思ったら女をみること鏡より厳しい、女性観客にきいてみなよ▼しかしまあ仕方ない。スノーホワイトは、いつまでも森を逃げまわっていても仕方ない、もともと自分の国ではないか。魔女にブン取られてどうする。回りの男はいまいち頼りないが、ええい、相手は自分を殺しにかかってくるのに、座して待つバカがいるか、やってやる。腹がすわったとたん「…なのよ」「…じゃなかったかしら」なんて言っていた今までの口調がガラリ変わって「ものどもよく聞け」ついに戦う姫君誕生であります▼戦うことにかけては魔女ラヴェンナも負けていない。しかし彼女はつらい身の上を泥水飲んで生き延びてきた。苦労しているのである。唯一助けあってきた弟も失った。下手するとセーラームーンみたいになるところを、シャーリーズ・セロンの哀しみのにじむ、しかし悪の権化たる表現力がさすがです。「スノーホワイト」は3部作の第1作なのですって。楽しみがふえました。

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