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シネマ365日

2012年8月22日

最高の人生の見つけ方 (2007年 ハートフル映画)

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監督 ロブ・ライナー
出演 ジャック・ニコルソン/モーガン・フリーマン/ショーン・ヘイズ

「来年」の約束

 原題は「棺桶リスト」。余命6ヶ月を宣告された自動車整備工カーター(モーガン・フリーマン)が入院先のとなりのベッドにいる成功した事業家エドワード(ジャック・ニコルソン)に「それはなんだ」と聞かれ、メモをみせる「棺桶リストさ」「?」「棺桶にはいるまでにしたいことをあげてみた。でもあと半年じゃなあ」「時間はあるぞ、やってみよう」自分も半年といわれているエドワードは「棺桶リスト」の実行にとびつく。貧乏だが家族に恵まれているカーターは「荘厳な風景を見る」「涙がでるほど笑う」「見知らぬ人に親切にする」大富豪だが家族に恵まれないエドワードは…彼の言い草がふるっている「でも結婚は大好きだ、4回もした」…「世界一の美女とキスする」「タトウをいれる」「スカイダイビングをする」と付け足す。二人は大胆不敵にも退院する▼監督はロブ・ライナー。青春映画の佳品「スタンド・バイ・ミー」もライナー監督でした。おもしろいですね。人生の入り口と出口の映画を撮っています。ライナー監督作品は「恋人たちの予感」とか「ア・フュー・グッドメン」とか、シリアスななかにも叙情のある作風が特色です。「棺桶リスト」は着々実行に移される。エジプトのピラミッドやタジ・マハールを訪れる。最高級のレストランでの食事、いかがわしいタトウ・ショップでの入れ墨、ムスタングをのりまわし、スカイダイビングをやる。ヒマラヤを目前にしたが吹雪が春までやまないと秘書のトマス(ショーン・ヘイズ)が報告する。彼はエドワードの忠実かつ聡明な秘書で、暴君のようなエドに友情すら感じているらしく、横暴を吹き流しながら命令を遂行する。「仕方ない、来年にしよう」と二人は合意する。来年という意味がわかっていても気ぶりにもみせない。腹のすわった男たちのさりげなさを、監督は愛しているようです▼旅の途中で男二人のよもやま話が紹介される。カーターは歴史学の教授になるのが夢だった。大学に入学し1年のとき今の妻と知り合い、彼女が妊娠した。選択の余地はなかった。妻と生まれてくる子供を食べさせるため自動車整備工になった。以後45年間その仕事だ。おれは、とエドワードが話した。16歳のときから働いている。金を稼ぐのが性にあっていて、やめられない。二番目に妻とのあいだにできた娘が一人いる。放任していたが、娘が夫にはじめて殴られたと聞いたとき話をつけに行った。その道の男に頼み二度と娘の前に姿を現さないようにした。娘はおれをののしり二度と会わないと言ってそれきりだ▼なんでも手に入れてきた男が家族とのだんらんだけは得られなかった。家族のために人生を捧げてきた男が最後に自分のためだけになにかしようとしたとき、残り時間はなかった。相手のそんな状態をエドとカーターはしっかり理解する。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの一分の隙もない、それでいて悠揚迫らない「掛け合い」が、シンプルきわまりない筋書きにもかかわらず観客によそ見を許さない。悪くすれば「スタンド・バイ・ミーその後」みたいな軽さになるところを、俳優二人のワンマンショーが映画を華やかにしている▼ファーストシーンはヒマラヤの尾根に登攀する男の後ろ姿で始まった。あとでわかるがこれはトマスなのである。カーターが息を引き取り、エドも後を追った。二人の遺言を果たすためトマスはラストシーン、ふたたびヒマラヤにきている。葬式はどうする、という話がでて、カーターは「仰々しいのは要らん、コーヒーの缶にはいるくらいの骨だけで充分だ」ふーん、とエドは聞いている。エドがトマスに命じたことは自分の死後コーヒー缶に入れた骨を、カーターのそれとふたつ、ヒマラヤのいい場所に置けということだった。トマスは二つのコーヒー缶を並べ氷の山に安置する。ふたりの「来年」はきたのだ。「荘厳な風景をみる」約束は果たせたのである。死をテーマにしているにもかかわらず、この映画の後味は限りなく明るくさわやかだ。それは目の前のスクリーンに広がる「荘厳な風景」だけの理由ではないと思う。

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