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シネマ365日

2012年8月24日

メカニック (2011年 アクション映画)

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監督 サイモン・ウェスト
出演 ジェイソン・ステイサム/ドナルド・サザーランド/ベン・フォスター

サイモン監督 10年ぶりのアクション 

 メカニックとは「殺し屋」。メカのように正確に請け負った仕事は必ず果たす、証拠は残さない。アーサー(ジェイソン・ステイサム)は名うてのメカニックだ。どんな相手でも依頼があれば必ず仕留める。しかし殺しの技術を教えてくれた、友人でもあるハリー(ドナルド・サザーランド)の暗殺を依頼主から頼まれた。ハリーが裏切ったために殺し屋5人が返り討ちにあった、生かしちゃおけない、というのだ。アーサーは躊躇したが結局引き受ける。ハリーの息子スティーブ(ベン・フォスター)は、父の仇を討ちたいためアーサーに弟子入りする▼タイトルは「メカニック」なのだが内容は非常に古典的な仇討ちものなのだとわかる。だから筋書きは読めてしまう。定番仇討ちものとちょっと趣がちがうのは、スティーブがどうにもならないダメ息子で、ハリーは息子の不始末のため大金をつぎこまざるをえず、組織を裏切ったのも金の手当をするためだった、という点だろう。アホ息子のためにハリーは命を捨てたのだ、と思うとアーサーは心中苦々しい、しかしハリーを暗殺したのは自分であるから、スティーブに対する後ろめたさは否みがたい▼殺しの技術を体得したスティーブは、やがて父親を殺したのはアーサーだと知る。スティーブを演じるフォスターは31歳。甘いマスクだがぬめぬめとした爬虫類か、軟体動物のような姿態で、父親の仇、仇といいながらエゴイストで冷たい性格をよく表し、なかなか隅におけない感じ。マッチョの代表ジェイソン・ステイサムと対照コンビだ▼サイモン・ウェストの監督デビュー作は「コン・エアー」(1997)。極悪囚人輸送機に乗り合わせたニコラス・ケイジと、脱走をたくらむ囚人たちとのサバイバル。顔をみただけで失神しそうな殺人犯・死刑囚の集団が飛行機をのっとってラスベガスに突っ込むというテンコ盛りアクション映画でした。デビュー作にしていきなり1億円の大ヒット。アクションだけかというと大ちがい。続く「将軍の娘」(1999)は、ジョン・トラボルタが将校殺人の悲劇と陰謀にせまる推理サスペンスの佳作。「トゥーム・レイダー」(2001)はアンジー主演のご存知ララ・クラフト誕生のヒット作。メカと銃に強いヒロインが、鍛えた体のアクションでも魅せました。サイモン監督はホラーにも進出「ストレンジャー・コール」はたったひとり家に残った子守の少女が、子供二人を守りストレンジャーとたたかう。銃やらナイフやらゴーストやらではなく「暗闇」「静けさ」といった「空気」のこわさが新鮮でした▼なんのためにサイモン・ウェスト監督作品を並べてきたか。「メカニック」のつぎにこれ、これが待機しているのです。「エスクペンタブルズ2」。「1」はシルベスタ・スタローンが自分で監督した。ヒットの勢いを駆って「2」はさらにアクション俳優大集合。ジャン・クロード・ヴァンダムとブルース・ウィリスが悪役に、シュワルツネッガーが出番をふやして出演(撮影は4日間で終わったそうだが)、もちろん「メカニック」のジェイソン・ステイサムも「1」に引き続くリーダー役。こんなうるさい連中をサイモン監督は仕切るのだ▼アクションつまり「活劇」の原点とは息もつかせぬ攻撃の連続にある。アクションの名監督といえる監督の映画には、そんなシーンが必ずある。しかしそれだけか。サム・ペキンパーの死の舞踏「ワイルド・バンチ」、ジョン・フランケンハイマーの「ポパイ」、ジョン・スタージェスの「老人と海」は老人と大カジキの冒険活劇だった。ドン・シーゲルといえばクリント・イーストウッドの「ダーティー・ハリー」があるが、代表作にはむしろ、ジョン・ウェインの遺作になった「ラスト・シューティスト」がふさわしいと思う▼さて問題はここだ。「メカニック」にこれらの映画がたたえていた詩情があるだろうか。アクション映画そのものが、クソアナログの活劇から離れていきつつあるという、一種の愚痴とうらみをじつは感じている。スピード感と見た目の派手さと俳優の筋肉に幻惑されず、きっちりと人間が描けているか。映画のいきつく先はけっきょくそこだろう。カタイこというなよ、というかもしれない。でもサイモン監督の映画センスは、硬派を描いてこそ生かされるセンスなのだ。騒々しいだけのアクション監督で終わってほしくないね。

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