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シネマ365日

2012年8月29日

ミスト (2007年 ホラー映画)

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監督 フランク・ダラボン
出演 トーマス・ジェーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン

霧の中の怪物 

 原作はスティーブン・キングの短編「霧」。ダラボン監督といえば過去に「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」というキング原作の傑作がある。キングはダラボン監督が23歳のときの「312号室の女」以来、ダラボン監督が気にいっている。監督作品としては寡作だが、彼の仕事は脚本・製作・総指揮と映画づくり全般に強い。でも残念だけど「ミスト」はフランク・ダラボン監督作品にしては飽き足らないのだ▼庭の大木が倒れるくらいのひどい嵐がメイン州を襲った。湖のほとりに住むデイビッド(トーマス・ジェーン)は、湖上にぶあつい霧がかかるのを見る。めずらしい現象だ。デイビッドは5歳の息子と町のスーパーに買い出しにでかける。そうこうしているうち、町は不思議な霧におおわれた。住民が不思議がるうち、スーパーマーケットの店舗に、血まみれの男が転がり込み、霧のなかに正体不明のなにかいると知らせる。店から出たら危険だ。こうしてスーパーはキング好みの「密室」と化す▼怪物の姿形はわからないが、店のシャッターを叩く不気味な音、視界をさえぎる霧がかきたてる不安、店の中に閉じこめられた人々はだんだん冷静さを失っていく。怪物がいるなんてばかなことをいうのをやめろという一派に、神の罰がいまこそ下されるのだという狂信的な女教祖ミセス・カーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)、軍事基地が近くにあり、店にきていた数人の軍人が外にでて様子をみることになる。ここから先はホラーまっしぐら。二つにちぎれた胴体とか、体にからみつく蛇のような触手、いつのまにか張りめぐらされる細い蜘蛛のような糸▼まちがいなく霧の中になにかいる。それも地球上の生体ではない、人間がみたこともない怪物だ。店の中はすでにパニック。わめきちらす女教祖の恫喝が次第に迫力と説得力をましていく。マーシャ・ゲイ・ハーデンが抜群の存在感だからボロがみえにくいけど「脱出のためには生贄が必要だ」という彼女のセリフに至っては、いくらキングのホラーでも「ちょっと待てよ」と言ってしまいそう。秩序も規律も失うと、人間こんなめちゃくちゃな言い草でも「もっともだ」という賛成派が現れるのだろうか。現れるのだ。生贄が必要ならいちばん先に自分の身を呈するのが教祖様ではないのかと、だれもいわないのだ▼教祖様は数人の「賛成派」を味方にひきこむのだけど、あんまり過激なので射殺されてしまう。みんな頭に血が昇ってきて、こっちのほうが怪物よりこわい存在になっていくプロセスがさすがだ。化物の体の一部が切り落とされ、棒かなにかでちょっと触ると、化学変化みたいな反応を起こす。核物質かその実験がからんでいるのではないか、この怪物には、と観客は大体察するだろうね▼デイビッドは自宅の様子をみに帰ってみると、妻は巨大な蜘蛛の巣に閉じ込められ(エイリアンの繭みたいなもの)惨殺されていた。町のなかにもはや生存者がいる気配はない。デイビッドは再びスーパーに戻る。町の孤島となったスーパーマーケットについに怪物が姿を現す。こんなやつ相手にしておれぬ、逃げよう、車に乗るやつは乗れ、とデイビッドは息子と数人を同乗させ四駆みたいな車でスーパーをあとにする▼映画が失速するのはここからだ。スーパーという密室から車という密室に代わり、女教祖という異彩を放っていた人物がいなくなり、協調路線で力をあわせて脱出しようということになった。怪物も姿を現したし、異常な能力も示した、そこで逃避行となっても映画的出し物としては、あとは霧が晴れるだけになってしまった、でも霧と怪物の因果関係は明らかではない。この映画は観客に希望を持たせようというのか、地獄の沙汰に引きずり込もうというのか、ヒーローを出現させようというのか、どんでんがしの大逆転を期待したらいいのか(たとえば「ショーシャンク」みたいに)、ヒューマニズムでしめくくるのか(「グリーンマイル」みたいに)、どうせい、といいたいのか見当がつかないぶん、どうでもよくなってくるのだ▼この不吉な予感は的中する。ガソリンが途切れた車は森のなかで立ち往生、遠からず全員、胴体をちぎられるか頭を割られるか、怪物の血祭りにあうのだ。もはやこれまで。デイビッドは拳銃の弾丸を確かめる。4発あって乗員は5人。森の中に銃声がひびきわたる。デイビッドが車の全員を射殺し、自分も死のうと車の外にでた。轟々と地面をゆるがす音とともに現れたのは怪物ではなく、怪物を退治する軍事基地の戦車だった。なにコレ。みな死んでしまったあとにでてくる救援隊。戦車を見送りデイビッドの号泣が森にひびく。いやだわ、こういうラスト。陸軍の実験の失敗作である無機質な怪物という設定なのだろうけど、ダラボン監督も料理するのはこれがせいいっぱい、という息切れを感じました。霧の中からでてきたのは、怪物は怪物でも竜頭蛇尾でした。

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