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シネマ365日

2012年8月31日

完全なる報復 (2009年 犯罪映画)

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監督 F・ゲイニー・グレイ
出演 ジェラルド・バトラー/ジェイミー・フォックス

遠隔殺人の息をのむテク

 フィラデルフィア。妻子を殺された男が司法制度に絶望し、自分で手をくだす復讐劇だ。クライド(ジェラルド・バトラー)は家に押し入ってきた二人の男に、目の前で妻が暴行され幼い娘とともに惨殺された。自らも重傷を負った。犯人らは逮捕された。検事ニック(ジェイミー・フォックス)は犯人の一人は死刑としたが、残る一人は司法取引によって極刑を免れさせる▼担当検事は犯人を有罪に持ち込むため、犯人に自白をさせて有罪とし、そのかわり刑を軽減する〈司法取引〉が認められていた。犯人二人をどうしても許せないクライドは「司法取引だけはやめてくれ」とニックに頼むが、もしここで犯人が無罪になったら、自分の「有罪率96%」に傷がつくことを考えたニックは、確実に有罪に落とし込める取引を用いた。クライドは犯人とニックを激しく憎む。10年後一匹狼と化したクライドは、まず死刑執行が決まった一人を、薬物をすり替えて猛毒死させる。形相も恐ろしく悶え死んだ死刑囚に、ニックはクライドのしわざだと目星をつけるが、なぜ厳しい監視の目を盗んだ薬物をすりかえたのか、その方法がわからない。クライドは司法制度の不備をニックに訴え、制度を変えることができなければ、妻と娘殺害の裁判にかかわったすべての関係者、出所した犯人はむろん判事・弁護士も命はないと警告した▼彼らはクライドの言葉通り順番に殺されていく。そのうち一人は五体を切り刻むという残酷な方法だった。血眼になったニックの捜査によって、居所をつきとめられたクライドはあっさり収監に応じるが同房の囚人を傷つけ、独房に移される。つぎに殺害予告が入ったのは担当判事だった。独房にいるクライドがなぜ自由に外の環境をあやつれるのか、共犯の存在をニックは確信する。クライドはヒントを与えてやるからふかふかのベッドを持ってこいとか、うまいランチを運んでこい、それも何時キッカリにとか、考えられない難癖をつける。ニックは煮えくりかえりながらもいうことをきくが、ランチの到着が6分ほど遅れ、捜査陣がクライドの教える判事監禁の現場に急行したときはすでに窒息死。もし6分早ければ助かっていた。ついでニック以外の同じ事務所の弁護士がすべて爆死する▼クライドは遠隔殺人のスペシャリストだった。彼が独房に入ったのは入る理由があったからだ。刻一刻遠隔殺人の手の内を明かしていくスリルは超一級だ。同時にニックの同僚の女性事務官はニックのやりかたに批判的だ。妻子を惨殺した犯人が司法取引のため有罪とはなったものの軽い刑で野放しになる、それは単に検事の有罪率をあげるためだけとしたら「むなしいわ」。ニックも耳が痛いが、今はそんなタワ言にかかわっておれないって感じ。とうとうクライドの秘密が暴かれ、遠隔殺人の息をのむ壮大な舞台裏が明らかにさらされた。追い詰められた復讐鬼クライドと、彼を罠にはめた辣腕検事は睨み合う▼女性事務官の指摘のように、ニックの、筋は通っているし正しくはあるが、官僚的で利己的な身の処し方に比べ、やむにやまれず極悪犯の立場に自分を追い込んだクライドが魅力的にみえます。もちろんクライドに対する司法の鉄槌はくだされるのですが、ドラマとしてはクライドのほうがもうけ役ですね。フォックスは〈そっくりさん〉でアカデミー主演男優賞をとってから、どうもパッとしませんね。チェロ演奏発表会で娘の演奏をきいている幸福な家族の肖像は、クライドの悲劇にくらべ、ニックの平凡さを際立たせたにすぎないシーン、みたいになっているのです▼それというのもクライド役のジェラルド・バトラーが良すぎたからか。イギリスの名門グラスゴー大学で法律を専攻。最優秀の成績で卒業。エリザベス女王のマネジメントを扱う弁護士事務所に就職するが俳優に転出、食えない時期もあったが「オペラ座の怪人」ファントム役を射止めたのが35歳。その前にアンジーと共演した「トゥームレイダー2」がありました。2007年「300(スリーハンドレッド)」では300人の軍勢で100万のペルシャ軍を迎え撃つレオニダスに扮し、1日4時間のトレーニングを3ヶ月。徹底的に肉体改造し、本作でもいちいち脱いでいませんが、それとなくみごとな筋肉を垣間見せています。

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