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特集「ディーバ(大女優)」

2012年9月8日

特集 ディーバ(大女優) オードリー・ヘプバーン 
いつも2人で(1967年 恋愛映画)

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監督 スタンリー・ドーネン

出演 アルバート・フィニー/オードリー・ヘプバーン

惜しかったですね

犬も食わぬという夫婦喧嘩の連続を、2時間にわたってみるのは苦痛だし退屈だった。それに夫のマーク(アルバート・フィニー)がいつも失くすパスポートを、妻のジョアナ(オードリー・ヘプバーン)が見つけてやる、というシーンも(またかよ)というほど頻繁に現れて食傷する。蓼喰う虫も好き好きであるから、どんな夫婦喧嘩の設定があってもおかしくはないが、どうしてこの映画はつまらなかったのだろう。夫婦の12年の旅路の物語である。いわゆるロード・ムービーで1台の車が走るにつれ、車窓の風景が過去の夫婦の想い出に重なる。何度となく時間軸がいれかわり、不倫もあったし浮気もあったが、それでもやっぱり「あなたが好き・君を愛している」なのだ▼オードリーは夫の女性関係に失望し、本作の撮影中離婚進行中であったから、これは彼女の実感のこもった最高の映画であるという一説もあるらしいが…確かにね、一年一作のマイ・ペースで悠揚迫らず仕事をしてきたオードリーが、1966年の「おしゃれ泥棒」翌年の「いつも2人で」同年さらに「暗くなるまで待って」とハイペースで映画を撮っている。ハイペースというより乱調ですね、これは。で、その結果1968年の離婚に至るのですけど、1969年には精神科医と結婚し翌年次男を出産して以後子育てに専念する。いわゆる傷心の期間ってわりと短かったのでは…ま、そんなことより何の話だった。そうか、この映画が面白くなかったってことだった▼夫婦愛の機微なら機微でいいのだけど、それが図式的すぎるのだわ。年中嫌味ばかりいいあっている夫婦がいて、相手を傷つけたと思ったら「愛している」といい、言ったと思ったら過去の過ちを蒸し返してまた嫌味をいう。結婚して12年もたったら、こういうこと、くどくど繰り返す情熱より「たのむ、もうアンタなにをしてくれてもいいから、きちんとお金だけ入れといて。あなたにかまいたくもないしかまってほしくもない」というほうが本音に近いのではないの? もちろん何年たってもアツアツのご夫婦はいらっしゃいますよ。でも彼らは少なくともこの映画の主人公たちみたいに「愛だ」「恋だ」「男とできたのだろ、けしからん」「あなたこそどうよ」って、寄るとさわると騒いでいるのでしょうか。マークは建築家として成功したみたいだし、ジョアナはいつまでも美しさを失わずにもてるいい女。すぐ嫌味をいう夫の悪趣味もそれはそれで妻の許容範囲みたいだし、要はこのふたり、というよりこの映画、喧嘩のタネをみつけ続けていかないと、他にどうしようも落としどころがないみたいなのだ▼オードリーも冴えないしね。オードリーという女優の本質は女に夢をみさせる能力にある。美しい。エレガンス。叙情。詩的。ロマンティック。リアリズムとは異なるところにオードリーの魅力はある。それを育児だ、セックスだ、浮気だ、離婚だ、関係修復だ、という日常一般レベルのお話を2時間もみせてくれてもねー▼むしろアルバート・フィニーがはまり役だ。アクがつよくて高飛車で、自分勝手で女を女と思わず、そのくせ嫉妬深く、怒ることと嫌味をいうこと、つまり女を傷つける形で愛情を現すという、複雑というかまわりくどいというか、粘着質というか、おまけに金も仕事もない、ふつうなら女が魅力を感じるとは思いにくい男にオードリーが惚れるという、ちょっと無理のある夫像を好演した。それと彼らを取り巻く関係者の面々がこれまた俗物ばかりで、頭のおかしな精神分析オタクの父親と幼い娘のいいなりになる母親、いかにも憎らしいそのガキぶりとか、脇の面白さにちょっと刺激がありますが、でもとてもスタンリー・ドーネンの本領発揮とはいいがたいです。ミュージカルとサスペンスだと水を得た魚なのに。しかもサウンドはヘンリー・マンシーニですよ。いつもなら最高の映画をとるべきスタッフが、寄ってタカって駄作を撮ったって感じです。こういうこともあるのか。惜しかったですね。

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