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特集「どんでん返し」

2012年9月25日

特集 どんでん返し番外編/ケビン・スペイシー「ベスト3」
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル(2003年 社会派映画)

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監督 アラン・パーカー

出演 ケビン・スペイシー/ケイト・ウィンスレット/ローラ・リニー

一瞬の誠意のなかで 

ハーバード大学の哲学科教授、デビッド・ゲイル(ケビン・スペイシー)は講義にラカンを引用しこういう「夢想は非現実でなければならない。実現すると興味が失せてしまう。生きるためには夢は決して叶えられてはならない。我々が欲するのは〈それ〉ではなく〈その幻影〉だ。欲望がかなうはずのない狂おしい夢を育む。夢を生きがいにすると決して幸せは得られない。知性と理想をもって生きるのが充実した人生だ。夢が叶うか叶わないかで人生の価値は決まらない。大切なのは一瞬の誠意、思いやり、知性の輝き、そして自己犠牲…人生の価値を究極的に決めるのは他人の命を尊んだか否か、なのだ」かなり長いセリフでしたが、映画の冒頭でアラン・パーカー監督は「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」という映画が、なにを言いたい映画なのかを結論しました。あとに続くのはそのプロットの展開です▼デビッドはハーバード大学を首席で卒業、27歳で終身教授の資格を取り、スペイン大使を父にもつ名門の娘と結婚、目にいれても痛くない一人息子と輝く未来を持つ死刑廃止論者だ。大学の同僚コンスタンス(ローラ・リニー)と廃止運動の先頭に立ち街をデモする。しかし彼の人生は暗転する。妻は出張と称してスペインで不倫。家に残された息子はクラウドというぬいぐるみの羊がともだちだ。ゲイルが「おやすみ」をいいに行くと「パパ、お願いがあるのだけど」息子は明日の朝食に「パンケーキ。シロップをのせて。チョコ・チップとホイップクリームも」ゲイルはこの頼みごとをよく覚えていた。彼が生の最後に食べる食事は、息子の願った食事である▼落とし穴はまだある。ゲイルの教え子が合格点をくれなかったゲイルを逆恨みし、誘惑したあげくレイプされたと告訴したのだ。その学生は告訴を取り下げたものの、ゲイルは「レイプ教授」のレッテルを貼られ妻と離婚、大学は辞職、仲間だった死刑廃止運動のグループからもつまはじき、ゲイルは酒におぼれアルコール依存症となって入院。退院したときコンスタンスだけが変わらぬ友情で迎えてくれた。このコンスタンスをレイプし殺害したとしてゲイルは死刑判決を受けたのだ。デビッド・ゲイルの「死刑反対」と「レイプ魔を死刑に」と世論は真二つ。処刑まであと4日となったとき、報道雑誌「ニューズ誌」の記者ビッツイ(ケイト・ウィンスレット)を指名して、ゲイルの独占インタビュー取材を、ゲイルのべリュー弁護士(レオン・リッピー)が50万ドルでオファーしてきた。「ニューズ誌」はこれを受け、ビッツイは刑務所へゲイルの面会に行く。1日2時間処刑までの3日間の連続取材。4日目は死刑当日である。動かぬ証拠の数々からゲイルの有罪を信じていたビッツイは、インタビューを進めるうち冤罪を確信する。しかし処刑は当日に迫っていた▼一瞬も目を離せない、緻密なエピソードの構成だ。死刑廃止をめぐるテレビ討論会で知事と相対したゲイルは「君は無罪の人間を死刑にするおそれがあるというが、わたしがいつだれを冤罪にした」と開き直られ反駁できなかった。ビッツイのモーテルに持ち込まれたビデオには殺人現場が撮影されていた。コンスタンスは白血病が進行していた。50万ドルの報酬はだれが受け取るのか。ビッツイは殺人現場を訪れ自分がモデルになって殺人のプロセスを再現し、コンスタンスは殺されたのではない、自殺だったと確信する。なぜコンスタンスはそんなことをしたのか。いかにも殺されたような設定をすれば、誰かが殺人犯として逮捕され無実の罪を着せられるのだ、ゲイルのように▼そこまで考えたビッツイはついに、周到に張り巡らしたすべてのからくりが、命を投げ打って自己犠牲に甘んじ、知性と理想をもって生きる、充実に値した人生への希求だったことに気づく。死刑が執行されたあと50万ドルはスペインの元妻に届けられた。妻にではなく息子の将来のために、であろう。父はレイプ犯でも殺人者でもなく、他人の命を尊んだ一瞬の誠意のなかで生きたことをゲイルは伝えたかったのだ▼ケビン・スペイシーが「静」ケイト・ウィンスレットは「動」で、鼻っぱしらの強い女性記者を好演しました。彼女「タイタニック」のときからそうでしたけど、堂々とした体格で、子供のころは脚が太いとよくいじめられたそうです。ゲイルがなんでインタビュアーに彼女を指名したのかは、ビッツイがマイノリティの味方であり、刑務所に入れられてもニュースソースをばらさない硬派の女だったからです。

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