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シネマ365日

2012年9月27日

追憶の女(1942年 恋愛映画)

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監督 ジョン・ヒューストン

出演 ベティ・デイビス/オリヴィア・デ・ハビランド

「風と共に」の因縁

「わたしはジョンと結婚した彼女だけは羨んだことがない、ジョンはずばぬけた頭脳の持ち主で魅力的、面白い人間だったが、彼の妻になるよりはただの友人であるほうがよかった、あるいはむしろ、彼の友達の妻であるほうがよかった」とローレン・バコールが自伝「私ひとり」でかくほどジョン・ヒューストンの女性蔑視、とくに彼の妻に対する蔑視は耐え難いものだったらしい。女嫌いのジョン・ヒューストンがどういうわけか女同士、姉妹の恋の葛藤に首を突っ込んだ映画が本作だ。姉妹を演じるのはベティ・デイビスとオリヴィア・デ・ハビランド。デイビスが34歳、ハビランドが26歳のときだ。22年後二人は「ふるえて眠れ」で共演する。役柄は逆転し、ハビランドが悪女役、デイビスはハビランドに神経をさいなまれる屋敷の女主人。同業者とおよそ交友関係をもたなかったデイビスが(結婚相手でさえ、映画関係からは避けていた、最後の結婚以外は)唯一ハビランドと仲がよかったというから、因縁浅からぬものがあったのだろう▼簡単に筋書きをいうと、婚約者がいながら妹の夫を誘惑し駆け落ち、彼を自殺に追い込み、実家にもどると妹とつきあいはじめていた元婚約者を取り戻そうと画策。うまくいかず子供をクルマではね、その罪を誠実な黒人青年になすりつけ、逃亡中運転を過って事故死するのがベティ・デイビスだ▼「風と共に去りぬ」の公開は1937年だった。ハビランドはメラニーを演じている。スカーレット・オハラが恋焦がれたアシュレーの妻である。スカーレット役はヴィヴィアン・リーに決まったが争奪戦は熾烈だった。全米各地でオーディションが行われ、名乗りをあげた女優はベティ・デイビス、キャサリン・ヘップバーン、ラナ・ターナー、スーザン・ヘイワードら錚々たるメンバーだった。ポーレット・ゴダードに内定したが未婚のままチャップリンと同居していることがわかって白紙となった。しかしメラニー役の競争も激しかった。ハビランドの妹がジョーン・フォンテインだ。「レベッカ」でオスカー主演女優賞の彼女である。これが姉と犬猿の仲だった。話を整理しながらいうと、この一つちがいの姉妹は東京生まれである。東京帝大教授だった父親の赴任とともに虎の門で生まれた。姉のハビランドは2歳でカリフォルニアに帰ったが、妹のフォンテインは14歳のとき、父が日本人女性と再婚したのが縁で東京に戻り、聖心女子学院に学んだ。女優としてはメロドラマのヒロイン役を得意としたが、実生活ではかなりの積極派で「風と共に」では、プロデューサーであるセルズニックに猛烈にアプローチし、まずスカーレットを、だめとなるとメラニー役をアタックした。それが姉に決まったのだ。妹は姉と親しかった男性と結婚するなど「追憶の女」を地でいくみたいなことをする▼「追憶の女」はデイビスにとって重きをなした作品とはいいがたい。デイビスはそれまでにすでに二度、オスカー主演女優賞を取り地位を安定させていたし、この手の悪女に刺激がなくなっていたせいか「ワルぶり」が流れているのである。しかしハビランドはこのあと「遙かなるわが子」(1947)「蛇の穴」(1948)「女相続人」(1948)と、ウィリアム・ワイラーやアナトール・リトヴァクら名監督のもと、立てつづけに傑作に出演。3年連続でオスカー主演女優賞二度、ヴェネチア国際映画賞主演女優賞に輝く。ベティの悪女はわたしのガラではないわねというふうに、自分のスタイルをうちたてる。それが「ふるえて眠れ」では堂々悪女に打って出たのだから、この二人なにを喋って楽しんでいたのだろう▼ジョン・ヒューストンの代表作といえば「マルタの鷹」「アフリカの女王」「白鯨」「荒馬と女」「勝利への脱出」などがある。それぞれの主演男優はハンフリー・ボガード、グレゴリー・ペック、クラーク・ゲーブル、シルベスタ・スタローン。グレゴリー・ペックはともかくとして、男の汗がジトっとにじむような男優ばかりだ。「追憶の女」は血迷ったとしか思えない。オードリー・ヘップバーンが主演した「許されざる者」は、オードリーは落馬するわ、骨折するわ、ショックで流産するわ、撮影は延期になるわ、ヒューストンは「許されざる者」を最大の失敗作と苦々しく自伝で位置づけている。彼は女と相性がよくないのである。しかしひとつだけ「追憶の女」にヒューストン流みたいなものがある。画策のあげくデイビスが無残に死ぬ。彼の好きな主人公の典型的なタイプは、あらゆる努力が徒労に帰し、むなしく挫折する虚無をたたえた人物像である。彼はデイビスを、女と思っていなかったのかもね。

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