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シネマ365日

2012年9月28日

私がクマにキレた理由(2007年 社会派映画)

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監督 シャリ・スプリンガー・パーマン&ロバート・プルチーニ

出演 スカーレット・ヨハンソン/ローラ・リニー/クリス・エバンス

こちら人生観察本部

スマートに仕上がった等身大映画。しかしこのヒロインちょっと幼くない? はやりの自分探しから映画は始まるのだけど、まあ日本では「悩む力」がベストセラーになったことだし「美しき惑いの年」への共鳴なのですかね、ヒットの要因は。だれが見に行ったのだろ。少なくとも「惑いの年」は小説のなかだけになり、「切れる理由」にはもううんざり。そんなものあろうとなかろうと半分目をつぶり、男でも女でもいいから気のあうトモダチと、いかに人生楽しく過ごすかを語りあいたいおじさん、おばさんではなさそうだけど▼ニューヨークのアッパーイーストの超高級アパートに暮らすX家の生活を観察するため、子守のパートをアニー(スカーレット・ヨハンソン)は始めた。大学は人類学を専攻し無事卒業した21歳の彼女。就活で受けた面接で「自分自身を話してみて」といわれグッと詰まって一言も言葉が出てこず、ショックのあまり冷や汗がタラ~。あともみず試験場から逃走した。以後「わたしってなに」という大テーマをかかえ、就活は一旦停止。母親は娘を大学で勉強させるため看護師をして、つらい夜勤も休日出勤も引受けて学資を稼いだ。やっと卒業。上場企業に就職し、世間を睥睨する職を得てほしい、頼むわよ。その気持を知っている娘は「自分探し」のため浪人するなんていえない、無事大企業にはいったから一人暮らしをしたいとウソをついて安アパートを「人生観察本部」とした▼子供を事故から助けたことをきっかけにアニーはX家の子守をひきうけることに。女主人ミセスX(ローラ・リニー)はエステに社会奉仕に勉強会に毎日夢中。旦那は一流会社の重役か社長か、とにかく仕事、仕事。そのくせちゃっかり浮気し女房にはふりむきもしない。会話のない見本みたいな夫婦で5歳の一人息子グレイヤーはほったらかし。これがまたにくたらしいガキで、金持ち息子のいやらしさ、子守のアニーを見下してひとつもいうことをきかない。アニーはさんざんいじわるをされるが、とうとうグレイヤーが生まれて初めて食べるおいしいおやつ(実は市販のただのお菓子。彼は有機栽培以外のものを食べさせてもらったことがない)で感激させ友達になることに成功。ミセスXの妥協のない雇用方針のため、すぐに解雇される子守をみてきたグレイヤーは「アニー、やめないでね」と頼むではないか▼夫の関心をよびもどそうとミセスXは健気に努力するが、いかんせん、愛情とか家族とかの基本理解に接点が皆無だ。旦那は「おれが稼いでやっているのだ、仕事の邪魔をするな、金には不足させていないだろう、それでエステでも講習会でも好きなことしろよ」妻は「パーティーには二人で出席するのが世間のきまりごとよ。子守もいることだし、少しはわたしの時間につきあってほしいわ」と、まあどこまでも自己主張が平行線で続くばかり、そこにはどこにも「子供」もしくは「相手」に関するキーワードが絶無である上、旦那はアニーに手をだすセクハラ男である。あんなにお金があって好きなことができて、ほしいものは何でも手に入るのにどうしてああみじめな人たちなのだろう…とアニーの人生観察はだんだん悲観的になる▼同じアパートの上に住むイケメンのハーバード(クリス・エバンス)がボーイフレンドになった。ミセスXはなんと言ったか「住む世界がちがうわ。棄てられる前に別れることね」てめえカネさえあれば人間しあわせだと思っているのか、大きなお世話だとアニーでなくてもいいたくなるわね。そんなこんなでさんざん観客にムカムカさせておいて、いよいよ映画はファイナルに。ハーバードからの手紙を隠していたミセスXは、自分の行き過ぎを棚にあげアニーをクビにする。アニー行かないでと、泣き叫ぶグレイヤーに心乱れるが、あのタカビー女をこれ以上増長させるのは人類の足をひっぱることだ。アニーは勝手知ったミセスX邸に乗り込み「子守監視カメラ」がテディベアのぬいぐるみに装着されているのをみつけ、そのカメラに向かって「きけ、おろかものめら」とこれ渾身、堂々たるスピーチをぶつ。そう。彼女はついに自分が何者であるか、語るべき意見と信念をものにしたのだ▼ここまで書いてきて、そうだよなー、だれだってアニーみたいに自信喪失のときってあったよな、なんとか乗り切ってきたからって、彼女らが幼いとかなんとか、エラソーにいえた義理じゃないよな、と謙虚になる自分発見。おおお。なんだ、なんだ。結局いい映画だったのかよ。

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