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シネマ365日

2012年9月29日

バーン・アフター・リーディング
(2008年 コメディ映画)

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監督 コーエン兄弟

出演 ジョージ・クルーニー/ジョン・マルコヴィッチ/フランシス・マクドーマンド/ティルダ・スウィントン/ブラッド・ピット

新カルチャーの波

「バーン・アフター・リーディング」とは機密書類に付帯している指示書「読後焼却のこと」ですね。「ノーカントリー」から一転、CIAをダシにして超「おバカ映画」を撮ったコーエン兄弟。配役の妙がバッチシ決まり兄弟の作品中最大のヒットになりました。粗筋というより、出演者の役ガラをいうほうが面白い。花も実もあるつぎの俳優さんたちが妍を競います▼出会い系サイトにはまる不倫中毒の財務省保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)、アルコール依存症による解雇を逆恨みし、反省の余地皆無のうえCIAの暴露本執筆に走るオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)、オズボーンの妻で夫には愛想がつきている女医で目下ハリーと不倫中の妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)、スポーツジムの従業員で美容整形マニアのリンダ(フランシス・マクドーマンド)、同じジムに務めるリンダの相棒チャド(ブラッド・ピット)は頭カラッポの筋肉マン。これだけで物語の大半は想像がつきそうでしょ。でもそれだけに終わらないのがコーエン兄弟なのです▼ファーストシーン。衛星から見た俯瞰から入ります。ぐんぐん近づいてきてその白い建物がCIA本部だとわかる。カッカッカッ。大股に廊下を闊歩する脚を追ってカメラはある部屋に。オズボーンが上司から長年勤めた職を解かれ、閑職に移ることを申し渡される。失意のマルコヴィッチ? そんなまともな人間はコーエン兄弟の映画に登場しません。オズボーンは「アル中だろうとなんだろうと、オレの能力をお前たちは舐めている」と開き直り、あいつもバカだ、こいつもアホと同僚をこきおろし、あんな連中に比べてオレの仕事ぶりを見ろ、と自分で自分をほめあげるが、だれも聞いていないとわかると「CIAの実態を暴露してやる」と決意する▼妻は夫の解雇をきくが、驚く変わりに「やっぱり」というか「いまさら」という感じの軽蔑をあからさまにし、夫の暴露本執筆計画に耳をかすふうもなく、不倫相手ハリーのところでベッドイン。ハリーは不倫が趣味のヘンな保安官。セックスのあと必ず「運動しなくちゃ」と言って走るクセがある。オズボーンの暴露本の原稿のディスクを預かった弁護士が、軽薄にもスポーツジムで落とし、それを入手したのがトレーナーのリンダとチャド。全身美容整形の費用がほしいリンダはチャドとともに、ディスクを元にオズボーンをおどすという妄動に出る▼巡りめぐってCIAのもとにデータはもどるのだが、オズボーンが知っている仕事の内容など「ふん」鼻であしらわれ暴露もヘチマもない。でも気の毒にJ・クルーニーもブラピも死んじゃうのだ。ブラピの最後のセリフが「ミスター・ブラック」どこまでふざけたコーエン兄弟。ブラックとは、いつになったらこの映画はおわるのだろうと、3時間に及ぶ忍耐を強いた「ジョー・ブラックをよろしく」であることはいうまでもなし。フランシス・マグドーマンド、とくればコーエン兄弟とのご縁はそもそもエール大学時代にさかのぼる。彼女のルームメイトだったホリー・ハンターとのつながりでコーエン兄弟と知り合い、1996年「ファーゴ」の映画史上初の、お腹の大きい女性警察署長になってあっさりアカデミー主演女優賞。いまはジョエル・コーエンと結婚しニューヨーク住まいだ▼ティルダを忘れてはいけませんね。女王様をやらせたらヴァネッサ・レッドグレーブかティルダ・スウィントンか、というくらいの適任なのです。その威厳というか、知性にあふれたクールな美貌というか、本作ではドジな夫に愛想をつかし、ヒステリーをおこす寸前で持ちこたえているアブナイ女医を演じる。冷たい目つきがきれいにみえる女優さんです。つまり「バーン・アフター・リーディング」とは初めから終わりまで大真面目なおふざけと、みもフタもない残酷さに終始。それをはまり役の俳優が嬉々として演じています。彼らの活気が渦巻いて観客をまきこむ。コーエン兄弟の映画って、とくにコテコテのコメディでもないのにノリのよさを感じさせるのは、役者たちが喜んでやっているからでしょうね▼SNS(ソーシャルネットワークなど)やスマホや、コミュニケーションというものが、読み込むというより感覚でつかむ短文カルチャー、もっというなら単語カルチャーで構成されるようになって、ハリウッドの劇構成も変わってきました。

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